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2026.06.24

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eラーニング制作会社はAIをどう使っているのか — 受託現場の2026年リアル
②教育テーマ毎のAI活用度

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    前回の記事(eラーニング制作会社はAIをどう使っているのか — 受託現場の2026年リアル ①制作工程におけるAI活用度)では、次の10の工程ごとにAIの親和性を見ていきました。
    ■eラーニング制作の10工程
    ①ニーズ分析・ターゲット設定 ②学習目標設計 ③コンテンツ構成設計
    ④シナリオ・台本執筆 ⑤ビジュアル・図解制作 ⑥音声・ナレーション制作
    ⑦動画制作・編集 ⑧設問・テスト設計 ⑨LMS実装・配信 ⑩効果測定・改善

    AIを活用できる場面は日々増えているものの、効果を高めるためにはAIに頼り切ることはできないというのが現状(2026.6時点)です。

    1.HSの実例:受託案件での工程別AI活用比率

    前回ご紹介した以外の視点でも、eラーニング制作においてAIがどこまで使えるかは変わってきます。例えば、教育対象となる知識がどれだけ整理されているか、どれだけ自社固有の情報を含むか、そして受講者に理解だけでなく行動変容まで求めるかなどです。

    ここでは、教育内容を大きく3つに分けて、受託現場でのAI活用の実情を整理します。

    案件タイプ別の傾向(コンプラ/技能伝承/知識習得)

    弊社が2025年以降に手がけた案件を3タイプに分けて、工程別のAI活用比率と、それによる制作工数の変化イメージを共有します。

    ① 製品・サービス教育、技能継承:自社固有情報が中心の教育

    自社固有の知識やノウハウを扱う教育は、AI活用の難易度が最も高い領域です。

    社内のナレッジや技術をどのように共有していくかは、AIが学習している汎用的な情報だけでは十分に生成できません。多くの工程を人手で進めながら、一部の補助工程でAIを活用するのが現実的です。

    事例

    例えば日立建機様向けに、海外代理店向けの製品教育コンテンツの作成を請け負っています。
    HCM事例ページのメインビジュアル
    参考:日立建機様向け事例

    このようなケースでは、文書化された情報が限定的だったり、そもそも十分に整理されていなかったりすることも少なくありません。講師や現場担当者の知識・経験に依存している領域が多く、まずはヒアリングを通じて情報を引き出し、分散した資料をもとに教育コンテンツとして再構成していく必要があります。

    さらに、自社特有の用語や製品の特徴、現場ならではの注意事項なども加味しなければなりません。加えて、ターゲットがどのような人たちなのか、どのような表現(図解、イラスト、アニメーション、インタラクションなど)であれば理解しやすいのかを見極め、実践と見直しを重ねながら設計していく必要があります。

    この領域では、AIは素材生成や情報整理の補助には有効ですが、教育設計の中核工程では人の関与が不可欠です。

    AIを活用できる箇所

    ・分散された資料や情報の整理、要約、関係者の理解促進
    ・素材の作成(画像、音声等)
    ・クイズ設問のたたき台生成 など

    また、このような領域は人手の比重が高いため、制作コストも上がりやすい傾向があります。

    一方で、製品の種類が多い場合や、継承したい技能の数が多い場合には、都度コンテンツを作るだけでなく、自社内で知識を蓄積・共有していく仕組みを整備する方が有効なこともあります。

    AI活用だけでなく、ナレッジ共有用システムの導入、共有テンプレートの整備、運用ルールの設計まで含めて、複数の選択肢を検討する必要があります。

    ② 店舗接客、DX教育:汎用知識と自社事情が混在する教育

    この領域は、基礎となる部分には汎用的な知識がある一方で、実際に現場で使われる業務フローやシステム運用には自社固有の情報が多く含まれます。

    そのため、①よりはAIを活用しやすい面があるものの、完成度を左右するのは依然として人の判断です。

    事例

    例えば大手建設業者様向けに、社内DXの一環として、現場の方々にDX化のメリットや実際の手順を伝えるためのマニュアルやアニメーション動画などを制作しています。
    建設現場DXのイメージ画像(AI生成)

    このようなケースでは、導入されたシステムや運用ルール自体に独自性が高く、AIだけで使い方を適切に整理するのは難しい場面が多くあります。

    弊社では、特に操作手順を扱う場合、どこで受講者が迷いやすいのかをテクニカルライターが判断し、マニュアルや動画表現に落とし込んでいます。

    また、業務フローについても、現状の紙ベース運用とシステム化後の運用との差分が整理されていたとして、それをどう伝えるか、どう現場に浸透させるかには多くの工夫が必要です。アニメーション化する、複数の教育施策を組み合わせる、といった表現・導入設計も重要になります。

    AIは、構成案や表現アイデアのたたき台を出すことには有効です。

    一方で、それを実際にどう使うべきかを判断し、受講者に伝わる形へ落とし込む作業は、まだまだ人の役割が中心です。

    AIを活用できる箇所

    ・コンテンツの構成、表現アイデアの生成
    ・素材の作成(画像、音声等)
    ・クイズ設問のたたき台生成 など

    ③ 階層教育、情報セキュリティ、ビジネススキル、ハラスメント、DE&I:汎用知識が中心の教育

    ※ただし、企業独自の事例や判断基準まで扱う場合は、②あるいは①に近づきます。

    この領域は、3つの中では最もAIを活用しやすい教育です。

    基礎となる知識や一般的な説明の枠組みがある程度共通しているため、AIに具体的な目的や対象者像を伝えることで、多くの工程でたたき台を作らせることができます。

    ただし、AIは一般化された無難な表現や標準的な構成を短時間で提示することには優れていますが、受講者の状況に深く適合した内容や、行動変容につながる設計まで自動で実現できるわけではありません。

    たとえ汎用的な情報を伝える教育であっても、ターゲットの状況や、なぜその教育を行うのか、受講後にどうなってほしいのかという目標によって、教育内容や表現方法は大きく変わります。

    AIに任せやすい工程が多いのは事実ですが、内容の正確性確認、対象者に合わせた表現調整、学習目標との整合性確認は人が担う必要があります。

    事例

    この分野は本当に多くのお客様からご相談をいただいてきました。IT系企業、保険会社、教育・研修会社などなど。多くの教育が汎用的な情報のなかでどこに重点を置くかの違いで成り立っているため、AIの活用が最も有効と考えています。
    HSの自社ISMS教育

    例えば、自社業務に合わせた事例や、自社内で実際に起きたケースを加えることで、教育効果は高まります。AIを使ってアニメーション用のダイアログを作成し、Vyondのようなツールでそのダイアログから動画を生成する、といった活用も可能です。

    ただし、AIが生成したスクリプトをそのまま使用することは推奨しません。
    ハルシネーションが含まれる可能性もあれば、言い回しが不自然で伝わりづらい場合もあります。特に構成案については、どのような流れで、どのような表現で伝えるべきかを人が丁寧に考えるべきだと考えています。
    参考:アニメーションを自動生成できるVyondGo

    AIを活用できる箇所

    ・原稿案の生成
    ・事例、ケーススタディのたたき台生成(要ファクトチェック)
    ・素材の作成(画像、音声等)
    ・クイズ設問のたたき台生成 など

    また、汎用的な情報に自社独自の補足を少し加える程度で十分な場合には、AIを使ってコンテンツを新規制作するだけでなく、既存の販売コンテンツの前後に独自情報を追加する方法も有効です。

    この方法であれば、コストを抑えながら、一定の教育効果を確保しやすくなります。

    2.eラーニングなど教育コンテンツ制作におけるAIと人の関わり方(②のまとめ)

    ここまで見てきたように、教育コンテンツ制作におけるAI活用のしやすさは、教育内容の性質によって大きく異なります。
    特に、自社固有の知識が多いかどうか、知識が整理されているかどうか、理解だけでなく行動変容まで求めるかどうかによって、人とAIの役割分担は変わってきます。
    また、教育そのものや教育内容に対して、作り手がどの程度の知識や経験を持っているかによっても、AIの活用度合いは変わります。
    もし「初めて教育企画を行う」のであれば、AIを相談相手やたたき台作成の相手として活用する価値は大きいでしょう。

    ただし、AIは自社・自組織の現状や課題に的確に刺さる内容を、自動的に作ってくれるわけではありません。
    実施後には、受講者のフィードバックや理解度テストの結果、その後の意識や行動の変化を評価し、次回の教育へ反映していくことが必要です。
    こうした改善の積み重ねを通じて、私たち自身が「どのような教育があるべきか」を考え、実行する力を養っていく必要があります。
    AIは依存する相手ではなく、ともに働く相手として、得意・不得意を理解したうえで付き合っていくべきだと考えています。