eラーニングブログ

Blog

2026.08.03

教材作成

eラーニング制作会社はAIをどう使っているのか — 受託現場の2026年リアル
③AI時代の制作会社と発注者 

  • カテゴリ

  • おすすめ記事

  •  

    Moodle導入支援・運用サービス
    eラーニング教材制作サービス

    制作会社の役割は「制作者」から「伴走者・品質保証者」へ

    今回は、全3回となった「eラーニング制作会社はAIをどう使っているのか」の最後、③としてAI時代の制作会社の在り方、ご発注いただくお客様との関係性について整理していきたいと思います。
    eラーニングなどの教育コンテンツを外部に委託する価値と、発注者との関係性の在り方の参考にしていただければとおもいます。

    AI時代に制作会社に求める3つの新しい価値

    過去2回で見てきた通り、eラーニング制作においてAIが担える範囲は確実に広がっています。原稿のたたき台づくり、素材生成、設問案の作成など、従来は人手で時間をかけていた工程の一部を、AIが補助できるようになったことは間違いありません。

    その一方で、教育コンテンツの価値そのものがAIだけで完結するようになったわけではありません。むしろAIが普及した今、発注者が制作会社に求める役割は、「作ること」から、「何を、どう伝えるべきかを一緒に考えること」、そして「品質を担保すること」へと変化しつつあります。

    AI時代の制作会社の役割として、次の3つの力についてご紹介していきます。

    01
    ①教育目的・対象者に合わせた「設計力」
    02
    ②継続的な改善により効果を実現する「伴走力」
    03
    ③品質を担保する「品質保証力」

    ①教育目的・対象者に合わせた「設計力」

    AIは情報を要約したり、構成案を出したりすることは得意です。しかし、「誰に、何を、どの順番で、どのように伝えれば理解が進み、行動につながるか」という教育設計そのものは、依然として人の判断に大きく依存します。

    わかりやすく言えば、同じ情報セキュリティ教育でも、新入社員向けなのか、管理職向けなのか、海外拠点向けなのかで、必要な事例や表現方法は変わります。更に、製品教育や技能継承のように、自社固有の知識や判断基準が多い領域では、単に情報を並べるだけでは教育として成立しないほか、様々な状況を踏まえてコンテンツを作成します。

    お客様が求めているのは「資料を作ること」ではなく、「学習者に伝わり、現場で活かされる教育にすること」で、最終的にはビジネスインパクトを実現することでしょう。その意味で、制作会社にはコンテンツ制作力に加えて、教育として成立させるための設計力がこれまで以上に求められています。

    ②継続的な改善により効果を実現する「伴走力」

    AIを活用することで制作スピードは上がっていくでしょう。それによって「まず作る」ことのハードルが下がる一方、公開後にどう見直し、どう更新し続けるかという課題はむしろ大きくなります。

    これまでの教育は、実施することが目的になりがちでしたが、AIによりその教育の効果を追求する時間(余力)と、力(AIの補助)が得られるようになります。

    単発で制作物を納品するだけではなく、教育を継続的に育てていくパートナーとしての役割が求められています。AIをどう使うかだけでなく、AIを活用した教育をどう改善し続けるかまで支援できるかが、今後の大きな差になっていくはずです。

    ③品質を担保する「品質保証力」

    AIは短時間で多くの案を出せる反面、誤情報や不自然な表現、文脈に合わない説明を含むことがあります。いわゆるハルシネーションです。特に教育コンテンツでAIをフル活用すると、「それらしく見えるが、実は伝わらない」、「情報としては正しく見えるが、現場では誤解を招く」といった問題が起こりやすくなります。

    そのため、制作会社には単にAIを使えること以上に、AIが出した内容を、対象者に合わせて適切な形へ整える力が求められます。内容の正確性、表現の自然さ、学習目標との整合性、受講者にとってのわかりやすさまで含めて、最終的な品質を保証することは、極めて重要な役割になると考えます。

    私たちは、テクニカルライティングの基礎力と、インストラクショナルデザイン(ID)の伝える力をフル活用して教育を支援していきます。

    AI時代の制作の型:「発散はAI、収束は人間」

    私たちの制作現場では、AIの得意・不得意を踏まえた役割分担を意識しています。原則はシンプルで、量とバリエーションを出す「発散」はAI、絞り込みと最終判断を行う「収束」は人間が担うという型です。

    発散はAI、収束は人間の制作フロー図

    具体的には、
    ①対象者や内容の制約をAIに共有する
    ②AIに幅広くアイデアを出してもらう
    ③本編内容や対象者との整合性、事実関係を人間が確認しながら絞り込む
    という流れです。もっともらしく見える出力ほど、そのまま次の工程に混ぜず必ず検証する——これは研修設計やシナリオ作成など、企画系の業務全般に共通する進め方でもあります。この積み重ねで効率化と品質向上を実行していきます。

    「外注」ではなく「協働」への発想転換

    従来の教育コンテンツ制作では、「必要な内容を伝えるので、あとはきれいに作ってほしい」という形で、制作工程を外部に切り出す形が一般的でした。もちろん今でもその進め方も多くありますが、AIが普及した現在では、それだけでは十分な成果につながりにくいケースが増えています。

    重要なのは、制作を丸ごとや、作業のみを外に出すことではなく、自社の知識や課題をどう整理し、どの工程で制作会社の専門性を活かすかを一緒に考えることです。

    この意味で、これからの制作会社との関係は「外注先」というより、「協働するパートナー」として捉えた方が実態に合っています。発注者が自社の背景や課題を共有し、制作会社がそれを教育として設計し、AIも含めた適切な手段を選びながら形にしていく。その往復の中で、より実効性の高いコンテンツが生まれます。

    両社が教育コンテンツの成果に責任を持つことで、特に、自社固有の情報が多い教育や、行動変容まで求める教育において、より効果の高いコンテンツを実現できます。

    AI時代において、制作会社の価値は「手を動かして作ること」だけではなくなりました。教育の目的を整理し、必要な情報を構造化し、AIと人の役割分担を設計し、最終的な品質と成果まで見据えて伴走すること。そうした協働のあり方こそが、これからのeラーニング制作における本質的な価値になっていくと、私たちは考えています。

    これからAI活用を始める発注者へのチェックリスト

    ここまでで見てきた通り、eラーニング制作におけるAI活用で重要なのは、自社の教育テーマや社内体制、求める成果に応じて、どこまでをAIで進め、どこからを人が担うのかを見極めることです。

    実際には、すべてを内製した方がよい企業もあれば、外部の制作会社と協働した方が成果につながりやすい企業もあります。また、教育テーマによっては、基礎部分はAIや既存コンテンツ(販売コンテンツ等を含む)を活用しつつ、独自性の高さなど難易度の高い部分だけを外部と一緒に作る、といったハイブリッド型が合理的な場合もあります。

    これからAI活用を始める発注者の方は、まず次のチェックリストを参考に、自社に合った進め方を整理してみるとよいでしょう。

    内製 vs 外注 vs ハイブリッドの判断軸

    外注の必要性について判断に迷われる場合は、次の観点を参考にしてみてください。

    1
    教育内容にどれだけ自社固有の情報が含まれるか

    自社独自の知識や暗黙知が多い場合は、制作の難易度が上がります。

    2
    教育の目的が「情報伝達」なのか「行動変容」なのか

    受講者に理解してもらうだけでなく、行動や判断を変えたいのであれば、設計や表現に工夫が必要になります。

    3
    社内に教育設計やコンテンツ制作の経験者がいるか

    経験者がいない場合は、進め方などを含めた要件定義から外部と相談することもご検討ください。

    4
    継続的に更新・改善できる運用体制があるか

    内容変更の必要性、受講者の反応などに応じて、見直しや更新を継続する必要があります。外部の制作会社と役割分担をした方が現実的なこともあります。

    5
    品質を確認できる人がいるか

    AI生成物だけでなく、作成している内容が正しいか、また伝わりやすい表現がされているか保証する必要があります。外部と協働する方が安全な場合があります。

    6
    効果測定の仕組みを持てるか

    次回に向けて何を改善すべきかを確認できて初めて、教育施策として意味を持ちます。どのような方法で効果を測るのかを事前に考えておくことが重要です。

    7
    受講者規模に見合った進め方になっているか

    受講者数が多い場合や、多言語展開や職種別の出し分けが必要になると、設計や管理の難易度も上がります。外部の支援を受けながら標準化や品質管理を進めた方が効率的になるケースも少なくありません。

    まとめ

    AI活用の可能性は確かに広がっています。しかし、自社に合った進め方は、教育内容や体制によって大きく異なります。
    「どこまでをAIで進めるべきか」「内製・外注・ハイブリッドのどれが合っているのか」を整理したい場合は、教育テーマや運用体制を踏まえて検討することが重要です。 自社にとって無理のない進め方を見極めることが、AI活用を成功させる第一歩になります。

    関連サービス

    「AIをどこまで使うか」の判断も含め、企画・設計から制作まで一貫してサポートします。eラーニングコンテンツ制作のご相談はお気軽にどうぞ。

    eラーニングコンテンツ制作サービス(https://hs-learning.jp/service/teaching/