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2022.10.14

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著作権侵害でコンプライアンス違反にならないために

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    現代はインターネットの普及によってデジタルネットワーク化が進み、さまざまな情報を手軽に入手できる環境になりました。一方で、その情報は誰でも簡単にコピーできる状態となり、知的財産権(知的な創造活動によって何かを創作した人に付与される権利)に対するモラルや知識を身につけることが必要不可欠となっています。

    知的財産権のなかでも、特に私たちになじみ深いのが「著作権」です。例えば、仕事で資料作成を行う際、ネット上のデータや文言を引用したことはありませんか? その時にふと「これは著作権の侵害にあたるのかな」と、不安を覚えたことはないでしょうか。

    今回は、そんな知っているようで知らない著作権にフォーカス。著作権の概要から著作物を扱うときの注意点、著作権侵害の事例などを紹介し、著作権侵害を防ぐためのポイントを解説していきます。


    1. 知っておきたい著作権と著作物

    人々の幅広い知的創造活動の成果について、その権利を保護する知的財産権には、文化的・精神的な創作物を保護の対象とする「著作権」、特許権や実用新案権、意匠権、商標権といった「産業財産権」と、そして「その他」に大きく分類されます。


    【出典:文化庁】知的財産権について(https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/chitekizaisanken.html)

    産業財産権などは、権利を取得するために申請や登録などの手続きが必要になりますが、著作権はこうした手続きを一切必要とせず、著作物が創作された時点で自動的に付与されるのが国際的なルールとされています。そのため、“権利のボーダーライン”が曖昧でわかりづらく、どこからが著作権侵害にあたるのか悩ましいケースも多くみられます。
    まずは著作権とはどういうものなのか、理解を深めていきましょう。

    ●著作権とは

    私たちは日頃から、インターネットや読書で知識を得たり、動画やテレビを観たり、映画や音楽を鑑賞したりと、さまざまな情報やエンターテインメントに触れて生活を楽しんでいます。このような文芸、学術、美術、音楽などの創作物は、つくり手が自分の思想や感情を作品として表現したものであり「著作物」と言われます。著作物のつくり手を「著作者」、著作者に付与される権利を「著作権」と言います。著作権が侵害されないように守ることは創作物を生み出した著作者の努力や苦労に報いることで、日本文化が発展することを目的としています。
    また、著作権は「著作権法」という法律でルールが定められています。

    ●著作物とは

    著作権法によって保護の対象となる著作物であるためには、以下の事項をすべて満たすことが必要です。

    【1】「思想または感情」を表現したものであること
    → 単なるデータは除かれます

    【2】思想または感情を「表現したもの」であること
    → アイデアなどは除かれます

    【3】思想または感情を「創作的」に表現したものであること
    → 他人の作品の単なる模倣は除かれます

    【4】「文芸、学術、美術または音楽の範囲」に属するものであること
    → 工業製品などは除かれます

    著作物の例示として、具体的に以下のようなものが挙げられます。

    〈1〉言語の著作物……小説、脚本、論文、詩歌、俳句、講演など
    〈2〉音楽の著作物……楽曲や楽曲を伴う歌詞
    〈3〉舞踊や無言劇の著作物……日本舞踊、バレエ、ダンスなどの舞踊や振り付け
    〈4〉美術の著作物……絵画、彫刻、漫画、書、舞台装置など(美術工芸品も含む)
    〈5〉建築の著作物……芸術的な建造物(設計図は図形の著作物にあたります)
    〈6〉地図や図形の著作物……地図または学術的な図面、図表、設計図、模型など
    〈7〉写真の著作物……写真、グラビアなど
    〈8〉映画の著作物……劇場版映画、テレビ番組、ビデオソフト、ゲームソフト、動画サイトにアップされている映像コンテンツなど
    〈9〉プログラムの著作物……コンピュータプログラム

    上記に加え、二次的著作物(上記の著作物を翻訳や編曲、変形、翻案して新たに創作したもの)、編集著作物(百科事典、辞書、新聞、雑誌など)、データベースの著作物(コンピュータで検索できる編集著作物)といったものも著作物にあたります。

    2. 二つの権利を保護する著作権法

    著作権法の内容は大きく二つに分かれます。一つは著作者の人格的な利益を守るための「著作者人格権」。そしてもう一つは、財産的な利益を保護する「著作権(財産権)」です。

    【著作者人格権】
    著作物を通して表現された著作者の人格を保護するための権利です。著作者人格権は著作者だけが持てる権利で、譲渡や相続ができません。著作者が亡くなることによって原則的には消滅しますが、死後も著作者人格権を侵害するような行為をしてはいけません。

    〈著作者人格権の種類〉
    ・公表権……著作者が著作物を公表するかしないか、また、公表する場合は、いつどのような方法で公表するのかを決められる権利
    ・氏名表示権……著作者が著作物に著作者名を表示するかしないか、また、表示する場合は、実名にするかペンネームにするかを決められる権利
    ・同一性保持権……著作物の内容やタイトルを、自分の意に反して勝手に変更されない権利

    【著作権(財産権)】
    著作者の経済的な利益を守るため、他者に勝手に利用されることを禁止できる権利です。著作者人格権と異なり、権利の一部またはすべてを第三者に譲渡したり相続することが可能です。

    〈著作権(財産権)の種類〉
    ・複製権……著作物を印刷や写真、コピー、録音、録画などのあらゆる方法により、「有形的に複製する」権利
    ・上演権/演奏権……著作物を公に上演したり、演奏したりする権利
    ・上映権……著作物を公に上映する権利
    ・公衆送信権/伝達権……著作物をテレビやラジオ、インターネットなどで送信・伝達する権利
    ・口述権……言語の著作物を朗読などの方法により口頭で多くの人に伝える権利
    ・展示権……美術の著作物や写真の著作物(未発行のもの)を公に展示する権利
    ・頒布権……映画の著作物を販売・貸与する権利
    ・譲渡権……映画以外の著作物またはその複製物を、販売などの方法で公衆に提供する権利
    ・貸与権……映画以外の著作物の複製物を公衆に貸与する権利
    ・翻訳権/翻案権等……著作物を翻訳、編曲、変形、翻案などの方法で二次的著作物を創作する権利
    ・二次的著作物の利用に関する原著作者の権利……自分の著作物(原作品)から創作された二次的著作物を利用することについて、原著作者が持つ権利

    3. 業務で著作物を扱うときに注意するポイント

    ここまで著作権や著作権法の概要を解説してきましたが、業務においては具体的にどういった点を意識して対応すればよいのでしょうか。この章では、企業が著作物を扱う際の注意すべきポイントについて説明していきます。

    ●著作物を利用する際は原則として著作者の許諾が必要。しかし、例外も

    著作物を利用するためには、原則として著作者の許諾が必要です。しかし、「個人や家庭内などの限られた範囲内で使用した場合は、基本的には著作権侵害とならず、許可を得なくても複製は可能である」という例外規定があります(著作権法第30条第1項)。これを著作物の「私的利用」と言います。

    業務上での利用についてはどうでしょうか。著作物を利用して社内資料を作成するケースで考えてみましょう。ごく一部の社員のみに資料を共有することは「私的利用」とみなされ、著作権侵害にはあたらないと思われるかもしれません。しかし、資料作成は業務上の行為です。私的利用とは言えず、無断で利用すれば、著作権侵害と見做されてしまいます。そこで問題解決のカギとなるのが「著作物の引用」です。

    ●著作物の引用には要件がある

    著作権法32条第1項に「著作権のある著作物でも、引用として利用する場合は著作権侵害に該当しない」とあります。つまり、著作物を業務で利用する場合にでも、引用という形であれば、著作権の侵害とはならず、著作者の許諾も必要ありません。ただし、著作権引用には以下の要件をすべて満たす必要があります。

    【著作権引用の要件】
    〈1〉引用の必要性があること
    〈2〉引用する部分とそれ以外が明瞭に区別されていること
    〈3〉本文が主で、引用部分が従であること
    〈4〉引用する部分にオリジナルからの改変が加えられていないこと
    〈5〉出典を明示すること(著作者名や出版社名、発行年月日、ページ数など)

    例えば、〈3〉に関しては、引用部分が大半を占めているような場合は、主従関係が逆転しているとみなされることもあるので注意が必要です。また、引用した文章や図説を勝手に調整すると〈4〉に抵触するため著作権の侵害にあたります。引用を行う場合は、5つの要件を念頭に置き、慎重に検討するようにしましょう。

    ●「フリー素材」でも規約には必ず目を通して

    資料に添えるイラストや画像にフリー素材を活用される方も多いと思います。基本的にフリー素材は無料で自由に利用できる素材と解釈できますが、著作者がすべての権利を放棄しているとは限りません。例えば商用利用が禁止されていたり、権利者への連絡やクレジット表記が必要など、利用方法について一定の制限が設けられている場合もあります。これらの素材はサイトによって規約が異なるため、きちんと利用許諾の範囲を確認するようにしましょう。

    ●SNSを活用する際も著作権を意識

    最近は広報やPR活動などで、企業がSNSを活用することも当たり前になってきました。もちろん、SNSを利用するうえでも著作権に対する意識が求められます。例えば、おすすめの書籍(※)をSNSで紹介することも著作権侵害にあたる可能性があります。これは、著作権法第23条1項に「著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する」とあり、ここで言われている「公衆送信」には、テレビやラジオ、Webコンテンツのほか、SNS投稿なども含まれるからです。
    つまり、SNSで勝手に著作物を投稿することは、公衆送信の権利を侵害することになり、著作権侵害を指摘されるリスクが出てきます。また、書籍の写真を撮影し画像データを利用する行為は、著作権法第21条「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」という複製権の侵害にもなります。

    (※)書籍の内容はもちろん、表紙も著作物としてみなされます。

    4. 企業における著作権侵害の事例

    企業活動において、とても身近な存在である著作権。それ故に、“ついうっかり”が思わぬトラブルに発展することも考えられます。ここでは企業における著作権侵害の事例を紹介します。

    〈CASE.1〉住宅地図の無断複製でポスティング会社に賠償命令

    ポスティング会社が、地図情報の管理・制作販売を行う企業が発行した住宅地図商品を無断で大量に複製・頒布していたとして、著作権侵害行為の差し止めなどが求められ、訴訟を起こされました。2022年5月に下された判決では、住宅地図商品は著作物にあたると認定され、ポスティング会社は侵害行為の差し止めや損害賠償の支払いを命じられました。
    東京地裁は「住宅地図に必要と考える情報を取捨選択し、より見やすいと考える方法により表示したもの」と、住宅地図商品は著作権法上の著作物であると判断しました。

    〈CASE.2〉記事の無断使用で、新聞社が鉄道会社を提訴

    鉄道会社は、2005年8月の開業直後から2019年4月にかけ、新聞社が発行した新聞や配信記事を無断で画像データ化。それを全従業員が閲覧できる社内のイントラネットに掲載し、約14年間に渡って新聞社の著作権を侵害しました。その記事本数は約4,200本にも上り、新聞社は使用料相当額などを含め約3,500万円の損害賠償を求めて、鉄道会社を提訴しました。さらに、鉄道会社は別の新聞社からも同様の著作権侵害で訴訟を起こされています。

    いずれのケースも、著作権に対する理解があれば防げたトラブルだと言えるでしょう。従業員の軽率な著作権侵害行為を防ぐためにも、コンプライアンス対策や社員教育の重要性を再認識させられる事例です。

    5. 著作権侵害を防ぐために

    業務上の行動が、意図せずとも著作権を侵害するケースは誰にでも起こりうるもの。しかし、著作権侵害の事例から見て取れるようにペナルティは決して軽いものではありません。だからこそ、従業員一人ひとりが著作権への正しい知識を身につける必要があります。

    また、著作権法は、2020年に成立した改正法により「違法ダウンロード規制の強化」や「リーチ対策」など、現在の時代背景を反映した内容に改正されています。このように、情報は日々アップデートされるため、“正しい知識を定期的に学習する”ことが大切です。

    そこで、効率的な学習対策にご提案したいのがeラーニングです。紙の教材に比べ更新もスピーディで、鮮度の高い情報を学習することができます。また、オンラインなので時間や場所に縛られることなく、移動中のすきま時間にササッと学習できることも利点です。

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    弊社の教材では、定期的に内容を見直し、アップデートしたり、新たなコースを追加したりしています。年内には、著作権を含めた新コースが追加され、より広く学んでいただけるようになります。また、お客様のご要望により、各社様の実情に、よりマッチした内容にカスタマイズすることも可能です。

    情報化が急速に進展していく現代。その流れに合わせるように、著作権をはじめとするコンプライアンスに関わる法律やモラルは、今後もアップデートされていくことが予想されます。従業員の意識を高め、思わぬトラブルを避けるためにも、eラーニングで定期的な社内研修を行い、最新の知識を修得することをお勧めします。

    執筆者:

    佐瀬 志津子

    教育ソリューション部 制作グループ ライター
    ヒューマンサイエンス入社後、テクニカルライターとして、
    製品マニュアルや業務マニュアルの設計・ライティングを経験。
    その後、eラーニング教材の原稿の執筆と制作ディレクションに従事。
    これまで約200本に及ぶ教材の制作に携わる。

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