2024.01.18
コンプライアンス教育とは?教育効果につながる実施のポイントも解説!
会計不正やデータ偽装といった企業不正や、従業員の不祥事など、コンプライアンス違反が起これば、ニュースでも大きく取り上げられます。最近では、SNSによる情報漏洩なども大きな問題になっています。このような現代社会において、企業におけるコンプライアンス教育は重要な意味を持ちます。
そこで今回は、コンプライアンス教育について掘り下げてみたいと思います。概要や意義をはじめ、具体的な教育内容や実施方法といった実践的なノウハウまで、詳しく解説していきます。
1. なぜ今、コンプライアンス教育が重要視されているのか
コンプライアンス(compliance)とは、もともと「法令を遵守する」という意味があります。しかし、企業におけるコンプライアンスの使い方はもっと広義的で、「法令を守ることはもちろん、社会的なルールに従い、公正・公平に業務を遂行すること」を指します。
企業は、従業員に給与を支払い、従業員の生活を守るという責任があるため、企業自体を存在させなければなりません。そのために必要なものの一つが「社会的な信頼」です。だからこそ、企業にとってコンプライアンスを遵守することが大切なのです。
近年は、コンプランス教育の重要性が高まり、ますます注目されるようになりました。
その理由として、以下のような背景が挙げられます。
〈コンプライアンス教育が重要視されている背景〉
●デジタル化が進み、情報漏洩のリスクが増加
デジタル化の進展により、顧客情報や取引データ、機密情報など、企業が取り扱うデジタルデータも増加し、それに比例して情報漏洩のリスクも高まっています
●SNSの普及によって“炎上”する可能性も
SNSなどの普及により誰でも気軽に情報発信できる現代は、企業や従業員の問題行動や不正が拡散される可能性があります
●不祥事に対する世間の見方が厳しくなっている
行き過ぎた批判やクレームが問題になるほどに、不祥事に対する世間の見方は一昔前に比べて厳しくなっています。そのため、違反した際は、株価下落や売上減少などの大きな被害に発展することが予想されます
このようなリスクを避けるためには、従業員一人ひとりが、コンプライアンスに関する正しい知識を身につけることが求められます。つまり、コンプライアンス教育は、企業にとって最重要な課題であると言えます。
2. コンプライアンス教育の目的と内容
コンプライアンス違反があれば、甚大なリスクにつながることがわかりました。
このことを従業員に理解させることがコンプライアンス教育の大きな目的ですが、それだけはありません。ここでは、コンプライアンス教育のさまざまな目的を見ていきましょう。
〈コンプライアンス教育の目的〉
〈目的.1〉コンプライアンス違反のリスクを理解させる
コンプライアンス違反を防ぐためには、違反した際に、企業や従業員本人がどのような制裁や影響を受けるのかを理解することが有効です。他企業の過去の事例など具体的なケースを提示することによって、より自分ごととして捉えることができます。
〈目的.2〉コンプライアンス違反によるリスクマネジメント
万が一コンプライアンス違反が発生した場合、初期対応を誤ると、さらなるリスクの増大が懸念されます。そのため、問題が起こった時点での適切な対応を学ぶことも重要です。実際のシーンを想定して演習を行い、従業員への自覚を促すようにしましょう。
〈目的.3〉社会人としてのルールを修得
コンプライアンス教育は、多くの新入社員研修で採用されているテーマです。社会人としての経験や知識が乏しい新入社員にとって、コンプライアンス教育は、社会の基本的なルールや企業に属する者としてふさわしい振る舞いを修得できる貴重な機会です。
これらの目的を達成するためには、コンプライアンスに関する多様な知識を身につけることが第一歩です。では、具体的にどのようなことを学ぶのでしょうか。
コンプライアンス教育の内容の一例をご紹介します。
〈教育内容.1〉改正個人情報保護法と、個人情報保護の方法
2022年4月に全面施行された「改正個人情報保護法」により、個人情報を取り扱うすべての事業者がその対象となりました。また、デジタル社会への対応に焦点を当てた、新たな規定の追加や罰則の厳格化も図られました。この法令を元に、顧客の個人情報をどのように保護するのか、何に注意をするべきかなど、個人情報保護に関する知識を修得します。
〈教育内容.2〉情報セキュリティ
コロナ禍をきっかけにリモートワークを導入する企業が増加した昨今、サイバー攻撃やデータ流出の発生リスクも増えています。そのため、インターネット環境に関する正しい認識や、コワーキングスペースなどで取るべき行動など、社外における情報セキュリティ対策を学ぶことは必須と言えます。
〈教育内容.3〉ハラスメント
ハラスメントの予防方法や対処方法、価値観や受け取り方の違いなど、すべての従業員がハラスメントに関する正確な知識と、共通認識を持つことも重要です。その結果、職場全体のリテラシーが強化され、自身がハラスメントの加害者もしくは被害者になることを防ぎます。
〈教育内容.4〉著作権や特許権の侵害
他社媒体から文章やデータなどを引用する際は、ルールが設定されています。そのルールを守らずに引用すると「知的財産権の侵害」となり、著作権法や特許権に抵触し、法的な問題に発展する恐れがあります。そのようなリスクを防ぐために、著作権や特許権に関する基本的な原則も理解しておきましょう。
〈教育内容.5〉SNSにおける不適切投稿や炎上の防止
SNS上での不適切な投稿や炎上は、企業のイメージや信頼性に大きな影響を与える可能性があります。そのため、SNSの適切な利用方法や投稿内容に関するガイドラインを学習することはリスク回避に有効です。具体的なトラブルの例を提示することで、従業員はより危機感を持ち、プライベートの場でも注意するようになるでしょう。
3. コンプライアンス教育の実施方法
コンプライアンス遵守について学ぶための研修には、どのような実施方法があるのでしょうか。
それぞれの特徴と合わせて解説します。
●集合研修
集合研修は、従業員を同じ日時、場所に集めて行います。講師役は社内の担当者が務めたり、社外から専門家を招いたりするケースが考えられます。メリットは、多数の従業員に対して一度に実施できる点です。しかし、準備に工数がかかったり、スケジュールや研修会場を押さえたりする必要も出てきます。また、欠席者へのフォローも必要となります。
●グループワークやロールプレイングでの研修
座学がメインの集合研修に、グループワークやディスカッション、ロールプレイングなどを組み合わせた研修です。従業員は実際のシナリオやケースを通じて実践的に学ぶことができるため、より理解を深めることできます。また、参加者同士が意見を交換し合い、他者の視点や経験を共有することで、視野を広げることにもなります。ただし、集合研修よりもさらに工数がかかる可能性があります。
●オンライン研修
ZoomやTeamsなどのWeb会議ツールを利用したオンライン研修は、場所に関係なく学習できるため、支社や支店が多い企業にとっては特に効率的です。しかし、時間が固定されるため、日程調整などの手間が発生します。
●eラーニング
同じオンラインでも、eラーニングによる研修は時間や場所を問わずに受講できるという利点があります。各人の好きなタイミングで学習が可能なので、参加率の向上にもつながります。一方で、講師への質問や相談ができないため、フォローできる体制を整えることが必要です。
このように、どの実施方法にも、メリット・デメリットが存在します。それぞれの特徴を考慮し、自社にとって最適な手段を選ぶようにしましょう。
また、コンプライアンス教育を実施する場合、自社で行うケースと、外部に委託するケースが考えられます。外部の委託先は主に、人材研修会社、法律事務所、eラーニングのベンダー(販売会社)などです。
〈自社で行うケース〉
自社独自のニーズやポリシーに合わせた自由度の高い教育を提供することが可能で、外部に委託するよりもコストを抑えることができます。その反面、教育にかかる時間や手間は増えます。また、講師や教材づくりには、ある程度の専門的な知識や経験が求められるため、そのようなエキスパートを抱えていない企業にとっては、“教材の質”が保証されない可能性があります。
〈外部に委託するケース〉
●人材研修会社
さまざまな研修を専門的に取り扱っている人材研修会社は、一般的に講義のカリキュラムが体系化されています。コンプライアンスの分野では、教育の意義やハラスメント、情報セキュリティなど、基礎的な講義を幅広く取り揃えているのが特徴です。
●法律事務所
コンプライアンス分野に精通した法律の専門家に依頼するケースです。知識・経験が豊富で、最新情報にも明るい弁護士が監修することで、より高精度な教材が作成できます。また、講師として招く場合、従業員の質問に対して的確なアドバイスが得られることも魅力です。
●eラーニングのベンダー
eラーニングでの研修を検討されている場合、ベンダーに相談することが有効です。コンプライアンスに関するさまざまな教材を入手できるほか、eラーニングを実施するためのシステムをセットで利用すれば、手軽に開始することができます。さらに、オリジナルの教材を作成することも可能です。
コンプライアンス教育を実施するためには、教材の用意や研修の設定など、さまざまな工程が発生します。もちろん自社内ですべてをカバーされるのもよいですが、工程や教材の一部のみでも社外のリソースを活用すれば、より質の高い教育を効率よく実施できます。
4. コンプライアンス教育実施のポイント
この章では、コンプライアンス教育を実施する際の“押さえておきたいポイント”をご紹介します。これらのポイントを意識して実践すれば、理解の促進や、より高い学習効果が期待できます。
〈ポイント.1〉当事者意識を持てるような教材づくり
コンプライアンス教育は企業にとって重要な課題ですが、従業員にとっては自分の仕事やスキルに直結しないことと捉えられる場合も多く、認識が甘い人も見受けられます。そのため、リスクの恐ろしさを実感し当事者意識を持ってもらうように、ケーススタディやシナリオを教材に盛り込んでみましょう。また、ディスカッションなどの“アウトプットの場”を設け、従業員同士の意識を高め合う工夫も有効です。
〈ポイント.2〉定期的な学習機会の提供
法律や規制の分野は、改正が行われたり、新しい法律ができたりと、毎年のように変更が発生します。そのような変更にも即座に対応できるように、コンプライアンス教育は、定期的かつ継続的に行う必要があります。また、教育機会を定期的に設けることで知識が定着し、コンプライアンスに対する意識を高く保つ効果もあります。
〈ポイント.3〉従業員が受講しやすい研修方法を選ぶ
コンプライアンス教育は、組織全体に適用される法律や規律に関する教育なので、従業員全員が学習する必要があります。そのため、すべての従業員が受講しやすいような研修方法を選びましょう。多数の従業員を抱える企業の場合、各自がスキマ時間で学べるeラーニングを導入するケースが多く見られます。
〈ポイント.4〉役職によって研修内容を変更する
前項で、すべての従業員がコンプライアンス教育を受けるべきと説明しましたが、教育の内容によっては、役職や職位などの階層別に行う必要があります。
以下、役職別に学ぶべき内容をまとめました。
〈経営層〉
経営層の方々は、戦略的視点からコンプライアンスの重要性を理解する必要があります。
さらに、コンプライアンスに関する基本方針やルールの策定、体制の構築など、スムーズな運用を実現するための知識も重要です。
〈管理者・中堅社員〉
コンプライアンスの基礎的なことだけではなく、部下の手本となる知識や行動を身につける教育が求められます。また、部下がコンプライアンス違反を犯してしまった時の対処法なども必要な知識です。
〈従業員・新入社員〉
コンプライアンスに関する基本的な知識のほか、プライベートでの言動やSNSの取り扱いなども注意するように、各々の意識を高めることが必要です。また、ハラスメントの被害者になりやすい若年層の社員や新入社員は、ハラスメント研修を受けることによって、自身を守るための知見を深めることができます。
5. まとめ
コンプライアンス教育の徹底は、持続可能なビジネス環境を確立するために不可欠な要素です。また、コンプライアンス教育を通して、企業と従業員がコンプライアンスに対する共通の認識を持つことで、お互いの信頼性が高まり、健全な企業文化を築くことができます。
このように、企業存続のカギを握るコンプライアンス教育は、前述のとおり、すべての従業員が研修を受ける必要があります。そこで、eラーニングでの学習をお勧めします。場所や時間を選ばないeラーニングは、従業員一人ひとりが自分のスケジュールに合わせて、柔軟に学習することを叶えます。
eラーニング教材制作の豊富な実績を持つヒューマンサイエンスでは、コンプライアンスの基本的な知識や概念が学べる 「基礎知識編」や、具体的な事例を通して理解を促進する「事例編1」 、「事例編2」 など、業種を問わないコンプライアンス対策の教材をご用意しています。さらに教材のご提供だけではなく、オリジナル教材の作成やeラーニングシステムの構築・運営など、トータルでサポートしています。
「これからコンプライアンス教育を始めたい」、「既存のコンプライアンス教育を見直したい」とお考えの企業さまは、ぜひお気軽にご相談ください。
株式会社ヒューマンサイエンスのeラーニングサイトもご参照ください。
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