2024.07.08
2025.09.26
学習管理システム(LMS)とは?~基本機能から導入効果、おすすめシステムまで~
人材育成や社内研修を効率的に進めるうえで、いま多くの企業が注目しているのが「学習管理システム(LMS)」です。受講履歴や進捗状況を一元管理できるほか、オンライン教材の配信やテストの自動採点などにより、研修担当者の業務負荷を大幅に削減できます。加えて、社員一人ひとりの学習状況を「見える化」することで、研修効果の最大化や人材戦略への活用も可能になります。
このブログでは、LMSの基本機能や導入メリット・デメリット、種類や選定のポイントを整理し、さらに代表的なシステム「Moodle」についてもご紹介します。これから研修の効率化や人材育成の強化を検討される企業担当者の方にとって、導入の判断材料となる内容です。
1. 学習管理システム(LMS)とは?
学習管理システムは「LMS」(Learning Management System)と呼ばれ、eラーニングの基盤となるシステムです。受講者が学習コンテンツを閲覧・受講できる「受講機能」と、管理者が進捗や成績を把握・運営できる「管理機能」を備えているのが特徴です。
LMSはオンライン学習だけでなく、集合研修や座学の授業を含めた学習全体の効率的な管理や、学習状況の「見える化」、さらに継続的な学びの仕組みづくりに役立ちます。
2. 学習管理システム(LMS)の機能
LMSは、eラーニングの教材や学習状況を一元管理するITツールですが、主に次のような機能を持っています。
【受講者機能】
履修コース一覧 | 登録済みコースを確認 |
---|---|
履修登録 | 学びたいコースを選んで受講開始 |
目次 | コース全体の流れを把握 |
学習動画・スライド | 教材を視聴して学習 |
テスト | 理解度チェックの試験を受験 |
レポート提出 | 課題をオンラインで提出 |
成績表示 | テストや課題の結果を確認 |
学習履歴 | 進捗や過去の受講状況を振り返り |
質問 | 講師や管理者に疑問を相談 |
【管理・指導機能】
教材の登録・配信 | 教材をアップロードし、受講者が学習できる環境を提供 |
---|---|
受講者の登録・管理 | 受講者情報や学習状況をまとめて管理 |
学習進捗の追跡 | 学習の進み具合や成績をリアルタイムで把握 |
テスト作成・実施 | オンラインテストやクイズを作成して実施 |
課題管理 | 課題の配布、提出状況の確認、評価やフィードバック |
成績の集計・分析 | テストや課題結果を集計し、学習効果を分析 |
コミュニケーション支援 | 掲示板やチャットで講師・受講者間のやり取りをサポート |
質問管理 | 受講者の質問と回答の履歴やステータスを管理 |
受講履歴の活用 | 進捗率や教材利用状況を確認し、学習改善に活用 |
3. 学習管理システム(LMS)のメリット・デメリット
「便利そうだけど、自分たちに合うのかな?」そんな疑問に答えるために、LMSのメリットとデメリットを分かりやすくまとめます。
メリット
学習者側のメリット
・学習した実績が記録されます
教材の配信や受講は基本的にLMSで管理されているため、個人の学習履歴や成績はすべてサーバー等に記録されます。記録されたデータはアクセス権を持っている講師や管理者が参照できます。
・いつでもどこでも自分のペースで学習できます
日時と場所が決められている集合研修と違い、モバイルデバイスとインターネット環境さえあれば、いつでもどこでも学習が可能です。自分のペースで自由に学習できることは大きなメリットです。気軽に学習できる分、“学びの習慣化”にもつながります。
・何度でも復習できます
集合研修はその日限り、時間が来れば終了です。テキストは手元に残っても、「教えてもらう」機会は一度きりです。一方、LMSを使えば繰り返し受講が可能なので、理解できるまで徹底的に反復学習することができます。
管理者側のメリット
・大勢の学習者に均質的な教育を提供できます
集合研修では一回あたりの参加人数が限られます。また、同じテキストを使っても講師によって“教育の質”にムラが生じることがあります。LMSを使えば、参加者の人数に関係なく、まったく同じ教育内容を届けることができます。
・集合研修に比べて低コストで実現できます
LMSを導入したある企業が試算を行ったところ、同社がLMSを使って始めた教育プログラムを集合研修で行うと仮定した場合、LMSの約4倍ものコストがかかるという結果が出ました。
・教材の調達方法が多様になります
LMS上で使用する教材の調達方法は、①既製品を買う、②オーダーメイドする、③既製品をカスタマイズする、④自社で制作(内製と表記されることも多い)するなど、選択肢は多岐にわたります。これらを組み合わせることで、オリジナリティを出しやすく、理想的な教育プログラムを追求することが可能です。
デメリット
学習者側のデメリット
・ネット環境が必須:接続できないと学習できない
・操作習得が必要:システムの使い方を覚える手間がある
・自己管理が重要:モチベーション維持は本人次第
管理者側のデメリット
・導入・運用コスト:システム利用に費用がかかる
・操作の複雑さ:ITリテラシーが求められる
・教材作成の負担:ある程度は自作が必要
・技術的トラブル:不具合や接続問題が発生することもある
・実技学習には不向き:体験型や対面型は対応が難しい
・強制力が弱い:自主的に学習を進める必要がある
・モチベーション維持が課題:学習継続は自己管理次第
4. 学習管理システム(LMS)の種類
自社や学校にぴったりのLMSを選ぶには、種類ごとの特徴を理解することが大切です。ここでは代表的なタイプを整理してみました。
クラウド型・オンプレミス型 | クラウドで手軽に利用するか、自社サーバーに導入して運用するかの違い |
---|---|
特化型・統合型 | 特定の機能に強いタイプか、多機能をまとめて使えるタイプか |
企業向け・学校向け | ビジネス研修に適したものか、教育機関向けに設計されたものか |
社内/社外両方に対応・社内限定(企業向け) | 社内研修だけでなく取引先や顧客にも展開できるかどうか |
教材付き・教材は自作 | 標準教材がセットか、自分で教材を作成する必要があるか |
モバイル対応・非対応 | スマホやタブレットで学習できるかどうか |
5. 学習管理システムの導入がおすすめのケース
すべての学習のシーンでLMSの導入が求められるわけではありません。ここでは特にLMSがおすすめのケースを3つご紹介します。
【ケース1】受講者が数万人の大規模なケース
ある大学では、通信での指導を受講している約85,000人の課題提出を郵送で行っておられました。これには、多くの時間と郵送費が発生してしまいます。また、送付先を間違えてしまい受講者に届かない、ということも起こりえます。誰に郵送したか、提出したのは誰かということを別ファイルで管理することも必要です。このような、受講者が数万人を超えるような大規模なケースでLMSを導入することに多くのメリットがあります。
LMSによってどのようにプロセスが変わるでしょうか。例えば、教師はLMS上の特定の場所に課題を置きます。受講者はLMSにアクセスし自分に与えられた課題をダウンロードします。課題が終了したら、それをLMSの指定の場所にアップロードします。教師はアップロードされた課題を評価します。教師は誰が課題を提出したかどうかを一覧で確認します。未提出の受講者だけに提出を促すメールを送ることもできます。LMSによって、時間と費用を大幅に節約することができます。
【ケース2】資格の認定試験のケース
ある特定の資格を認定するための認定試験というものがたくさん存在します。多くの人に資格を取得してもらうためには、なるべく多くの試験会場を設けなければなりません。もし、東京と大阪にしか試験会場がないなら、受講者には多くの旅費が必要となります。一方で、試験を実施する側も、試験会場が増えればそれだけ運用のための経費がかかることになります。このような資格を認定する試験のケースではLMSを導入することに多くのメリットがあります。
LMSによってどのようにプロセスが変わるでしょうか。ある認定試験では、プレゼンテーションと筆記試験の2つを実施しています。まず、プレゼンテーションはLMS上からオンライン会議システムで行います。そのプレゼンテーションを2人の審査官が見て質疑応答を行い、評価シートをLMSに登録します。次に審査官はLMSの課題機能を使って問題を作成し、受験者に回答してもらいます。審査官はその回答を確認し、合否を決定してLMSのメッセージ機能を使って事務局に知らせます。その後、事務局はLMSのメッセージ機能で受験者に合否を知らせます。
このように認定試験をオンライン化することにより、受講者は試験会場に移動することなく自宅で受験することができます。また、審査側も多くの試験会場を設ける必要がなくなります。加えて、評価シートや課題などが一元管理され、内部での共有が簡単になります。
【ケース3】教育機関、医療機関の方たちに情報を提供するケース
教師や医師、看護師など、教育機関、医療機関の方たちは毎日を忙しくしておられます。その中で、日々進歩している様々な技術を学んでいかなければなりません。そのための情報の提供の仕方として、刊行物や図書を発行したり、セミナーや勉強会などを行ったりしています。特に、セミナーや勉強会の場合は、決まった日時に、決まった場所に行かなければなりません。忙しい中で、そうしたものに参加することはなかなか難しいことになります。このようなケースではLMSを導入することに多くのメリットがあります。
LMSによってどのようにプロセスが変わるでしょうか。ある学会では、LMSを活用して学会の会員向けに、新しい情報の提供とセミナーの開催を実施しています。会員は時間や場所の制約を受けず、自分のペースで学ぶことができます。また、オンライン会議システムを使ったセミナーには、場所を選ばず参加することができます。更に、LMSでは教材ごとの受講者数、セミナーごとの参加数を把握できるので、その参加状況によって、教材やセミナーの内容を見直し、より多くの方たちに利用してもらえるものとなるように努めています。
6. 学習管理システム(LMS)選定のポイント
「LMSを導入したいけど、どれを選べばいいのか分からない…」そんな悩みを持つ方も多いはずです。ここでは、選定の際に押さえておきたいポイントをわかりやすく整理しました。
コストが抑えられる | 導入・運用に無理のない価格で利用できるか |
---|---|
必要な機能がそろっている | 学習管理に必要な基本機能が標準で備わっているか |
簡単な操作性 | 学習者も管理者も直感的に扱えるか |
セキュリティが徹底している | 安全に運用でき、場合によってはインターネット接続なしでも利用できるか |
参照できる情報が多い | 利用者コミュニティやフォーラムで解決のヒントを得やすいか |
カスタマイズ性が高い | 自社や学校の運用に合わせて柔軟に設定・拡張できるか |
これらのポイントを満たす代表的なLMSが Moodle です。次に、そのメリットを詳しく見ていきましょう。
7. おすすめの学習管理システム「Moodle」とは?
ここで、おすすめの学習管理システムをひとつご紹介します。それは「Moodle」(ムードル)です。
Moodleは、ライセンス料無料のオープンソース型の学習管理システムです。教育現場だけでなく企業やさまざまな団体組織でも広く使われています。
メリット1:ライセンス費用が不要、コストメリットあり
Moodleはオープンソースの学習管理システム(LMS)で、基本的なライセンス費用はかかりません。例えば、他社のクラウド型LMSでは、受講者50人規模の小規模利用でも年間数十万円~100万円以上のライセンス費用が必要になる場合があります。しかし、Moodleであればライセンス費用は無料で、必要なのはサーバー代や運用サポート費用だけです。
このため、年間で数十万円~数百万円のコスト削減が可能で、予算を教材作成や講師のサポートに回すこともできます。中小企業や学校など、限られた予算で効率的にeラーニング環境を整えたい場合に大きなメリットです。
メリット2:大規模で活発なコミュニティを活用
Moodleは世界中で広く使われているオープンソースLMSのため、大規模で活発なユーザーコミュニティがあります。公式フォーラムには、毎月何千件もの投稿や質問があり、カスタマイズやトラブル対応の情報が日々共有されています。
例えば、日本国内でも教育機関や企業でMoodleを導入している事例が豊富で、教材作成やコース設計のヒント、プラグインの使い方などをコミュニティから簡単に学べます。困ったときにすぐ検索したり質問したりできるので、社内に専任のIT担当者が少なくても安心です。
このように、Moodleのコミュニティを活用することで、導入・運用のハードルを下げ、より効率的に学習環境を整えることができます。
メリット3:企業・教育機関でも安心して使えるセキュリティ
「オープンソースのMoodleは安全なの?」と不安に思う方もいますが、実際にはセキュリティ対策がしっかりしています。Moodleは世界中で多くの大学や企業で利用されており、定期的に公式サイトからセキュリティアップデートが提供されています。
例えば、Moodleの公式サイトでは毎月セキュリティリリース情報が公開され、脆弱性が見つかった場合は即座に修正パッチが提供されます。また、管理者はアクセス権限の細かい設定やログ監視ができるため、社内データや受講者情報を安全に管理可能です。
さらに、社内サーバーで運用すればインターネットに接続せずに利用することもでき、外部からの攻撃リスクをさらに低減できます。オープンソースだからこそ世界中のユーザーや開発者による監視があり、セキュリティ面でむしろ信頼できる環境が整っています。
> Moodleリリース情報
> 【Moodle基本講座】Moodle のセキュリティ対策
メリット4:独自の教育体制に合わせて変更・拡張(カスタマイズ)が可能
Moodleの大きな魅力のひとつは、自社や学校の独自の教育体制に合わせて柔軟に変更・拡張できることです。例えば、企業研修で「新人向け基礎コース」と「管理職向けリーダーシップコース」を分けて運用したい場合、それぞれに異なるカリキュラムやテスト形式を設定できます。
さらに、Moodleでは多彩なプラグインが提供されており、必要に応じて機能を追加可能です。例えば、
Quizventureプラグイン:ゲーム感覚でクイズを解きながら学習できる
Attendanceプラグイン:オンライン・オフライン両方で出席管理が可能
Certificateプラグイン:修了証を自動発行し、学習の達成感を向上
大学や専門学校では、学部ごとに異なる履修ルールや成績評価方法に応じてカスタマイズすることも可能です。たとえば、レポート提出方法をPDFのみとしたり、オンライン授業の進捗に応じて自動的に次の教材を開放する設定などができます。
このように、Moodleなら「自分たちのやり方」に合わせてシステムを変えられるため、既存の教育体制を崩さずに効率的で効果的な学習管理が実現できます。
> Moodleプラグインディレクトリー
> 【Moodleのプラグインの種類は?】
メリット5:機密性の高い教材を扱う場合に活用できます
機密性の高いeラーニング教材を扱う場合、社外への情報漏えいは大きなリスクです。Moodleはオープンソースで独自環境に構築できるため、教材や受講データを自社サーバーで完全に管理できます。
例えば、社内限定の研修教材を配信する場合、Moodleを社内サーバーに設置すれば、インターネットに接続せずに利用することも可能です。これにより、外部からのアクセスや不正なコピーのリスクを大幅に減らせます。
Moodle公式パートナーについて
Moodleはオープンソースで自由度の高いLMSですが、その分「設定や運用、カスタマイズが難しい」と感じる方も少なくありません。そんなとき頼りになるのが Moodle認定パートナー です。認定パートナーは、Moodleの公式資格を持ち、導入から運用、カスタマイズ、トラブル対応まで幅広くサポートできるプロフェッショナルです。たとえば、社内限定の研修環境を安全に構築したい場合や、独自機能を追加して効率的な学習管理を実現したい場合に、具体的な設計・導入支援を受けられます。
パートナーが提供する具体的な支援事例です。
・環境構築サポート:サーバー設定やインストール、ネットワーク環境の最適化
・カスタマイズ支援:企業独自の評価システムやコース設計に合わせた機能追加
・教材移行・データ管理:既存のeラーニング教材をMoodleに移行し、安全に管理
・操作・運用トレーニング:管理者・講師向けの操作マニュアル作成や研修実施
・トラブル対応・セキュリティ対策:定期アップデートや脆弱性対応、バックアップ体制の整備
初めてMoodleを導入する企業や学校でも、パートナーに相談することで 短期間で安心して運用をスタート できます。公式サポートの知識と実務経験があるため、設定ミスによるトラブルやセキュリティリスクも最小限に抑えられます。
つまり、Moodle認定パートナーは 「安心してMoodleを使いこなせる環境」を提供してくれる心強い存在です。導入や運用で不安がある場合は、専門家の力を借りることで、効率的かつ安全に学習環境を整えることができます。
8. まとめ
学習管理システム(LMS)は、オンラインでの学習を効率的に管理・運用できる便利なツールです。履修状況や成績の管理、教材配信、テストやレポート提出など、学習に必要な機能が一つのプラットフォームで整っているため、学校や企業の教育現場で活用されています。
LMSを選ぶ際は、コスト・必要な機能・操作性・セキュリティ・カスタマイズ性などをポイントに、自分たちの学習環境に合ったシステムを選ぶことが大切です。
特にMoodleは、ライセンス費用がかからず、豊富なプラグインやカスタマイズ機能で独自の学習環境を作れる点が大きな魅力です。また、大規模なコミュニティがあるため、困ったときには情報やサポートを得やすいのも安心材料です。さらに、Moodle認定パートナーを活用すれば、導入や運用、カスタマイズもスムーズに進められます。
学習管理システムをうまく活用すれば、学習者一人ひとりに合わせた効果的な学びを提供でき、教育の質を高めることができます。これからLMSを導入する方は、ぜひ自分たちのニーズに合ったシステムを選び、活用してみてください。
弊社株式会社ヒューマンサイエンスは、国内におけるeラーニングの草創期から教材作成に携わり、20年以上に及ぶ実績を築いてきました。その豊富な実績に基づいた正しいノウハウを、ぜひ皆さまのビジネスにお役立ていただければと思います。LMSの導入、教材制作、教材の多言語化など、eラーニングの様々なソリューションを提供しております。ぜひ、お気軽にご相談ください。
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