2017.02.16
日常的な学習を実現するマイクロラーニング
2016年頃から、マイクロラーニングというキーワードがeラーニング業界の中で盛んに使われています。なぜ流行っているのか、これはどんな教育なのか、なるべくわかりやすくご紹介します。
2016年に行われた世界最大の人材開発系イベントATD ICE(ATD International Conference and Exposition)(外部リンク:英語)において、マイクロラーニングは最重要キーワードの一つでした。検索対象セッション数は2015の「1」から、2016「7」に増加。…これだけでは、300以上のセッションの中に埋もれそうですが、いずれのセッションも大変な盛況で、その他多くのセッションでもキーワードとして取り上げられていました。
日本でも2016年後半からこのキーワードが盛り上がりつつあり、実践している企業も現れはじめています。
ただし、何をもってマイクロラーニングと定義されるのか…、まだほとんど明確ではありません。一つ確実なのは、「短い(マイクロな)教材」であること。その短さは概ね1~3分(5分や10分以内の場合もあり)程度であること。
では、ただ短いコンテンツがマイクロラーニングなのでしょうか。広く捉えればそうかもしれませんが、それをどう活用するかがマイクロラーニングの本質であるべきと考えています。
なぜ生まれたの?
企業教育におけるeラーニング受講までの流れは様々あります。「社員一斉」、「グループや職種などに対して」、「個人を選別して対象に」、または、「自ら受講依頼を出して」…など。一般的なのはある程度の規模で一斉に行わせることではないでしょうか。
この場合、次のような課題が発生しがちです。
【一斉型eラーニングに起こりがちな課題】
・忙しいなどを理由に見てくれない。
・関係ない内容だと思われてしまう。
・知識として定着しない。
・行動に結びつかない etc
このような課題要因のひとつに「動機づけの難しさ」があります。
集合研修(講師からの対面による動機づけがなく)とは異なり、学習内容を自らの課題として受け入れづらいのです。
40/20/40モデル(外部リンク:英語)に言われるように研修前後の上司のかかわりが重要ですが、eラーニングでは限界があります。
eラーニングは常にこのように課題を抱えています。
上記は主に日本で起こりがちなことですが、アメリカでもミレニアルという新世代の台頭により、これまでの教育(およびその他常識)が通用しない、という問題が起こっています。手軽さを好む彼らの嗜好に合わせ(媚びるのではなく、うまく適合するため)、eラーニングにも様々な取り組みがなされているのです。マイクロラーニングや、ゲーム型教材(ゲーミフィケーション)はそのひとつとして生まれていると私は考えています。
…と、理屈っぽいことを挙げてきましたが、最大の理由は技術的な成長です。これまで学習した履歴だけを管理していたLMSのようなシステムが、教育全体を管理できるように多機能化したということになります。
人と技術の変化に伴い、マイクロラーニングは、これからの教育(成人教育)の中で、大きな可能性を秘めていると捉えていいのではないでしょうか。
使い方と効果のイメージ
最近、ファッション・メイク・料理などの「1分動画」が流行っていたりします。これは、マイクロラーニングとほぼ同質で、すでに若者を中心に活用されていることになります。
- 【主な効果】
- 忙しい人もスキマ時間で気軽に(1日3分を月20日繰り返すと、1時間/月)
- 飽きない範囲で学習させ、学習を習慣化(学習する文化は、企業の発展に不可欠)
- 必要なタイミングで、必要な教育を提供(異動や昇格などに合わせて配信)
- たくさんの情報を詰め込んでもすぐに忘れる*1
- もともと簡潔なので、復習も容易。知識定着&行動にも影響しやすい(Learning Transfer)*2
*1 エビングハウスの忘却曲線(外部リンク)
*2 行動変容に結び付ける工夫(教材設計)も合わせて行われている場合がある
マイクロラーニングの実践方法、取り入れ方は様々で、1時間の受講の後の復習用や、店舗シミュレーション(ビデオ&クイズ)で即実践させてみる、などがあります。
また、「ここが分からないんだけど、どうすればいいの?」とか、「打ち合せの合間に、ちょっと手が空いちゃった」とか、多様なニーズに合った教育を提供できるという強みがあります。
まとめ
マイクロラーニングのあるべき姿と特徴をざっくりまとめると以下のようなものであると考えています。
・ただ短いだけでは不十分?
・配信・管理に関するシステム的な対応が必要
・知識定着&行動変容が目的
・日常的に学習を続けられる気軽さ
今後さまざまな活用がされていく中で、新しい定義や本文と異なるものが出てくるかもしれません。
本文は、あくまで考察としてご参考ください。
関連サービス
執筆者:
立野 慶吾
教育ソリューション部 コンサルティングユニット
・研修講師・Webデザイナー等を経験
・教育設計・eラーニング開発等に従事
・ラーニングデザイナー(eLC認定)
・ATD International Professional Member
お問合せ先:
事業推進部 森岡
電話番号 : 03-5321-3111
hsweb_inquiry@science.co.jp
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