2022.04.11
「SCORMに準拠したeラーニング教材」とは
近頃、LMSの移行に伴うご相談をいただくことが増えています。
中でも、これまで利用していたeラーニング教材を、新しいLMSでも同じように使うにはどうすれば良いかをご相談いただくケースが多いようです。
また、新しいLMSに搭載する教材を、新規で作りたいがどうすれば良いか、というご相談もよくいただいています。
今回は、eラーニング教材を新しいLMSに載せ替える際や、新規制作時にもポイントとなる、「SCORM(スコーム)」についてご紹介します。
1. SCORMとは
SCORMとは、「Sharable Content Object Reference Model」の略称で、eラーニングを標準化するための規格の名称です。米国のADLという米国防総省系の組織が提唱しており、世界にその採用を促しています。
SCORMに準拠することのメリットのひとつに、「互換性」が挙げられます。互換性とは、異なるLMSであっても、SCORMに準拠していれば、同じ教材を同じように利用できるということです。※
※:実際には、LMSごとに、個別の調整が必要なことがあります。そのため、弊社ではお客様のご要望と共にLMSの名称などについてもヒアリングし、最適な対応をご提案しています。
そのため、お客様からLMSの移行や教材の載せ替えについてご相談をいただいたとき、初期のヒアリング内容には、必ずSCORMに関するご質問が入ります。 もちろん、SCORMに関連したご相談は多岐にわたっています。一部ですがご紹介します。
• SCORMに準拠した教材が大量にあり、LMS移行後も利用したいが、うまく搭載できない
• 既存の教材がSCORMに準拠しているかわからない
• 新旧LMSで準拠しているSCORMのバージョンが異なるので、対応してほしい
• 既存の教材をSCORM対応させたい
• 簡単にSCORM教材が作れるツールはないか
• 新LMSが推奨しているツールを使って教材を開発してほしい
• 旧LMSの教材は引継ぎ不要だが、新LMSに搭載できる形で新規に教材を開発してほしい
2. SCORMに準拠しているeラーニング教材とは
SCORMに準拠したeラーニング教材のことは、「SCORM対応している」「SCORM化されている」「SCORM教材」などと表現します。
教材のSCORM化とは、教材を標準化された仕組みに対応させることです。
では、eラーニング教材がSCORM化されていると、LMSに搭載したとき、どのような働きをするのでしょうか。
大きく分けて2つあります。
1)教材の構造に関する情報をLMSに渡す(LMS上での表示や学習順を決める)
2)学習履歴(進捗状況、テストの点数、合否、学習時間など)をLMSに渡す
これらについて、ご説明していきます。
3. SCORM教材の構成
SCORM教材の標準的な構成は以下のとおりです。
・manifestファイル
・教材HTMLファイル(SCO)
・jsファイルなど(設定データほか)
manifest(マニフェスト)ファイルは、教材の構造に関する情報を持っています。
LMS上で教材を表示すると、教材の構成(目次)を確認できますが、この情報を提供しているのがmanifestファイルです。
また、目次上の項目と実際の教材データの紐づけ(1章1節のファイルは、0101.htmlである等)などもmanifestファイル内で記述されます。
教材HTMLファイルは、教材の本体(実際の解説やテストなどのいわゆる「中身」)です。HTMLファイルをベースとしています。
当該教材内で、最も小さな単位のことを「SCO」(スコ、エスシーオー)と呼びます。教材により1つのSCOとなる範囲はさまざまです。
たとえば、教材は3章構成になっているが、3章分が1SCOとして扱われていて、全章閲覧しなければ修了にならないということもあります。そうではなく、章や節の単位で区切られ、「1章」「2章」「3章」、「1-1」「2-1」「3-1」などがそれぞれSCOになっていることもあります。
LMSの目次には、各SCOがリンクとして提示され、学習単位になっています。したがって、LMS上で区切られている単位がSCOと考えていただくとイメージしやすいかもしれません。
SCOの区切り方は自由に設計できます。
弊社で教材制作を行う際、SCOの単位(区切り)は設計初期の要確認事項です。
通常、学習履歴はSCOの単位で取得されます。
そして、教材側からLMS側に渡す閲覧の情報や、合否の判定について設定したファイルが合わさり、SCORM教材を構成しています。これらのファイルは、JavaScriptを使って記述されます。
4. SCORM教材の作り方
では、SCORM教材はどのように作れば良いのでしょうか。
新規で作成する場合、最も簡単なのは、SCORMに対応したツールを使う方法です。
iSpringやStorylineを使うと、設定項目を指定するだけで、SCORM教材を生成できます。ツールによって機能は異なりますが、履歴の取得方法などを細かく設定することもできます。
上記の2つのツールは、英語のインターフェースなので、教材として必要な設定項目や、書き出し時に指定するSCORMのバージョンについては知識や確認が必要であること、また、ひとつの教材に複数のSCOが設定できないなどの制限はあるものの、専門知識はほとんど要りません。
ツールの利用が難しい場合には、やはり専門知識が必要です。
既にeラーニング教材があり、それを活用したい場合には、当該データの状況によって必要な対応が変わるため、データの解析など調査が必要です。また、LMSを移行するケースでは、LMSが対応しているSCORMのバージョンが新旧で異なっていないかなども確認します。
なお、SCORMは、eLC 日本イーラーニングコンソシアム(https://www.elc.or.jp/)で認定している資格制度の一角を占める(SCORM技術者)、知識や技能が必要な技術です。
5. LMSの変遷
冒頭でも述べた通り、ここ数年、eラーニング業界では「LMSの移行」もトレンドのひとつです。
弊社でeラーニングコンテンツの業務を開始した2000年頃には、日本の名だたる大企業がLMSをリリースしていました。
そこから20年以上の時を経て、LMSも時代と共に変遷し、求められる役割が変わってきています。
近年では、教育面での管理だけには留まらず、人事情報なども含めて管理する「タレントマネジメントシステム」として、さらに多くの機能を備えたシステムの台頭が目立ちます。
また、MoodleやTotaraといったオープンソースのLMSも登場しており、選択肢が増えています。
LMSの導入方法も変化しています。以前は、クライアント企業が専用のサーバを自前で構築するなど、比較的大掛かりな準備を、それなりの費用をかけて行うものでした。しかし、今では、クラウドサービスで利用できるLMSも登場し、それを期間限定で利用することも特別なことではなくなっています。全体的に、eラーニングが利用する企業の規模に関わらず導入されやすい状況です。
また、残念ながら、LMS事業から撤退する企業もあり、そのような状況も手伝って、LMSの入れ替え関連の対応もニーズが高まっているようです。
ヒューマンサイエンスでは、お客様がeラーニングを導入・運用するためのさまざまなサービスを承っています。
お困りのことがあればお気軽にお問い合わせください。
> eラーニング教材制作
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> MoodleおよびTotara Learn(オープンソースLMS)の導入・運用支援
お問い合わせフォームはこちら(https://hs-learning.jp/contact/)
執筆者:
佐瀬 志津子
教育ソリューション部 制作グループ ライター
ヒューマンサイエンス入社後、テクニカルライターとして、
製品マニュアルや業務マニュアルの設計・ライティングを経験。
その後、eラーニング教材の原稿の執筆と制作ディレクションに従事。
これまで約200本に及ぶ教材の制作に携わる。
お問合せ先:
電話番号 : 03-5321-3111
hsweb_inquiry@science.co.jp
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