eラーニングブログ

Blog

2024.05.24

オリジナル教材
ノウハウ

マタハラ防止措置の義務化とは? 背景から企業が取るべき対策まで解説!

  • カテゴリ

  • おすすめ記事

  •  

    Moodle導入支援・運用サービス
    eラーニング教材制作サービス

    労働環境の改善や女性の社会進出を促進するうえで、重要な課題の一つであるマタニティ・ハラスメント(以下マタハラ)対策。日本では2017年に「男女雇用機会均等法」が改正され、すべての企業に対して、マタハラ防止措置を講じることが義務付けられました。

    では、具体的にはどのような対応が必要なのでしょうか。今回はマタハラに焦点を当て、企業が取るべき対応や、研修の重要性などを解説していきます。


    1. マタハラの実態と種類

    まずは、マタハラについて、基本的な部分を理解しておきましょう。

    ●マタハラとは

    マタハラ(マタニティ・ハラスメント/Maternity Harassment)とは、職場において、女性従業員が妊娠・出産したことや育児休業制度などの利用を理由に、不当な取り扱いや嫌がらせを受けることをいいます。

    マタハラの実態を見てみましょう。
    過去5年間、就業中に妊娠または出産した女性労働者のなかで「マタハラを受けた」と回答した人の割合が26.3%という調査結果があります。女性従業員のおおよそ4人に1人が、マタハラを経験していることになります。


    厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査について
    令和2年度版報告書 p.120 図表124より抜粋し、グラフ化

    実際に受けたマタハラの内容としては、全体では「上司による、制度等の利用の請求や制度等の利用を阻害する言動」(24.3%)が最も多く、「繰り返しまたは継続的な嫌がらせ等(嫌がらせ的な言動、業務に従事させない、もっぱら雑務に従事させる)」(24.0%)が続きました。回答者の年代別によってハラスメント内容が異なる点にも注目です。


    厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査について
    令和2年度版報告書 p.122 図表126

    このようなマタハラ行為は、「産休や育休制度を利用することへの嫌がらせ型」と「妊娠や出産したことへの嫌がらせ型」の2種類に分かれます。

    〈マタハラの種類.1〉産休や育休制度を利用することへの嫌がらせ型

    雇用機会均等法や育児・介護休業法が対象とする制度・措置の利用を妨害したり、利用した労働者に嫌がらせをしたりすること。主に以下の3つのケースがあります。

    (1)解雇その他不利益な取扱いの示唆
    制度の利用を請求したり、利用した従業員に対して、上司が解雇などの不利益な取扱いを示唆すること。

    ▶具体的には…
    ・産休の取得を上司に相談したところ「休みをとるなら辞めてもらう」と言われた

    (2)制度等の利用の請求または利用の阻害
    制度の利用を請求したり、利用した従業員に対して、上司や同僚が請求・利用しないよう働きかけること。

    ▶具体的には…
    ・育児休業を請求したら、上司から「育児休業をとるなら昇進しないと思え」と言われた
    ・育児休業を請求したら、同僚から「周りに迷惑がかかるから請求しないで」と言われた

    (3)制度等を利用したことを理由とした嫌がらせ
    制度などを利用した従業員に対して、上司や同僚が嫌がらせをすること。

    ▶具体的には…
    ・上司から「所定外労働の制限をしている人に大きな仕事は任せられない」と言われた
    ・同僚から「あなたの短時間勤務のせいで皆が迷惑している」と言われた

    〈マタハラの種類.2〉妊娠や出産したことへの嫌がらせ型

    女性従業員が妊娠・出産したことに関する周囲からの言動によって、就業環境が害されること。主に以下の2つのケースがあります。

    (1)解雇その他不利益な取扱いの示唆
    妊娠・出産をした女性従業員に対して、上司が解雇などの不利益な取扱いを示唆すること。

    ▶具体的には…
    ・上司に妊娠を報告したところ「代わりの人を雇うので早く退職した方がいい」と言われた

    (2)妊娠・出産をしたことを理由とした嫌がらせ
    妊娠・出産をした女性従業員に対して、上司や同僚が嫌がらせをすること。

    ▶具体的には…
    ・上司から「妊婦はいつ休むかわからないから仕事を任せられない」と言われ、雑務ばかりをやらされた
    ・同僚から「妊娠するなら多忙な時期を避けるべきだった」と言われた

    なお、男性労働者が被害の当事者になるケースは、パタハラ(パタニティ・ハラスメント/Paternity Harassment)と呼ばれます。パタハラは「産休や育休制度を利用することへの嫌がらせ型」のみで、例えば、男性が育児休暇の取得を希望するも、その利用を妨げる行為はパタハラに該当します。

    ※マタハラ問題とも関連が深い「育児・介護休業法」については、以下ブログでも詳しく解説しています
    2022年改正育児・介護休業法 5つの改正ポイントをわかりやすく解説

    2. マタハラ防止措置の義務化と企業が取るべき対策

    ●マタハラ防止措置の義務化とは

    近年、マタハラに関する労働局への相談は増加の一途を辿っています。2015年度には、全国の労働局に寄せられた相談件数が前年度比19%増の4,269件にも上り、大きな問題として注目を集めました。

    そのような背景もあり、2017年1月、男女雇用機会均等法の改正によってマタハラを防止する措置を取ることが、すべての企業に義務付けられました。

    ●マタハラ防止措置のために企業が取るべき対策

    マタハラ防止措置の義務化に伴い、企業が講ずべき措置の要点については、厚生省が以下のような指針を示しています。

    (対策.1)マタハラ禁止の方針の明確化および社内での周知
    全従業員に対して、マタハラが許されないことであることを明確に伝えます。その際、マタハラの具体的な例を盛り込むと理解の促進につながります。また、マタハラを懲戒事由に入れるなど、就業規則を変更することも有効です。

    (対策.2)マタハラについての相談に応じ、適切な対応をするための体制の整備
    マタハラに関する相談窓口を定め、相談窓口の担当者が内容や状況に応じて適切に対処できるような体制を整えることが大切です。また、マタハラが実際に発生した場合に限らず、発生の恐れがある場合や、マタハラに該当するかどうかの判断が曖昧な場合であっても、広く相談に対応することが求められます。

    (対策.3)マタハラが発生した際の適切かつ迅速な対応
    マタハラが発生した際、まずは被害者と加害者、さらに目撃者などからヒアリングを行い、事実関係を迅速かつ正確に確認することがポイントです。事実確認ができた場合は、すみやかに被害者へのケアを行います。さらに、加害者に対しても適正な措置を講じましょう。そして、再発防止に向けた対策も忘れずに行います。

    (対策.4)マタハラの背景要因を解消するための措置
    マタハラの背景要因を解消する手段として、業務体制の整備や各種制度の周知が挙げられます。これらの対策を通して、従業員同士の円滑なコミュニケーションや「適切な業務を遂行していく」という意識の醸成につながり、マタハラの発生を未然に防ぐことが期待できます。
    例えば、妊娠・出産した従業員の体調不良によって別の従業員の業務負担が増え、その結果、嫌がらせなどのマタハラが発生することが予想できます。そのため、体制を整備し、業務分担を見直すことはマタハラ対策に有効だといえます。

    (対策.5)マタハラに関連するプライバシー保護などのルールの周知
    相談者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じましょう。具体的には、プライバシー保護に関するマニュアルを作成したり、相談を受ける担当者にプライバシー保護に関する研修を行うなどが考えられます。また、マタハラに関する相談や、事実関係の調査への協力を理由に不利益を受けることがないことを、従業員に周知することも重要です。

    たとえマタハラが発生した際の対応策を制定したとしても、相談する体制が整っていなかったり、相談はできても情報が漏れる可能性があれば、従業員は安心して相談できません。問題が表面化しないため、“マタハラの種”が発生してしまいます。まずは、マタハラに関する悩みや不安を、安心して打ち明けることができる相談窓口が必要です。

    3. マタハラに関する研修実施の必要性と、そのメリット

    マタハラの被害を受けた従業員は、心身にさまざまな影響を受ける可能性があります。
    マタハラに関する心身への影響を調査した結果によると、「怒りや不満、不安などを感じた」(63.2%)の割合が最も高く、次いで「仕事に対する意欲が減退した」(47.4%)、「職場でのコミュニケーションが減った」(30.4%)と続きました。


    厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査について
    令和2年度版報告書 p.136 図表143

    企業にとって大切な資産である従業員が健康を害し、その結果、業務に支障をきたすことは大きなリスクです。そのため、社内全体がマタハラに関する正しい知識を身につけ、常日頃から意識した行動を取れるようにすることが重要です。

    そこでおすすめしたいのが、マタハラに関する研修の実施です。
    研修の実施は、知識習得、法令遵守の徹底という面だけではなく、従業員の健康やモチベーションの向上、女性従業員の活躍促進など、さまざまなメリットがあります。また、特に加害者になりやすい立場である管理職の皆様にとっても、有効な予防策として期待できます。

    ●マタハラに関する研修によって期待できるメリット

    〈メリット.1〉従業員の意識向上
    研修を通じて、マタハラがどのような行動や言動に表れるのか、その深刻さや影響について理解が深まります。また、被害者に対して、理解や支援の手を差し伸べることの大切さを学ぶことができます。

    〈メリット.2〉労働環境やコミュニケーションの改善
    マタハラを意識することによって、これまでの労働環境や従業員同士のコミュニケーションが見直されるきっかけとなります。これにより、従業員のモチベーションや生産性が高まり、離職率の低下や従業員満足度の向上などのメリットが期待できます。

    〈メリット.3〉女性従業員の活躍促進
    マタハラを防ぐことは、女性従業員の活躍を後押しすることになります。長く、安心して働ける環境が整うことで、女性従業員のキャリア形成やリーダーシップの発揮につながります。

    〈メリット.4〉リスクの軽減
    マタハラが発生すると、企業は法的なリスクにさらされる可能性が出てきます。研修を通じて未然にマタハラを予防することで、このようなリスクを軽減できます。

    このように、マタハラに関する研修は、企業や従業員にとってポジティブな効果が期待できます。

    4. まとめ

    妊娠・出産という人生における大きなライフ・イベントは、当事者にとって喜ばしい出来事である一方で、働き方の変化をもたらすきっかけにもなります。その際、周囲の人たちが妊娠や出産に対する理解や知識があれば、マタハラを防ぎ、健全な社内環境を築くことが期待できます。

    そのために、マタハラに関する研修の実施が有効であるとお伝えしました。
    特にeラーニングを活用した研修は、利便性や効率性が高く、時間や場所を問わずに学習することが可能です。

    ヒューマンサイエンスでは、マタハラを手軽に学ぶことができるeラーニング教材「STOP!マタハラ ~働きやすい職場づくりのために~」をご提供しています。マタハラの基礎知識に加え、妊娠・出産に関するさまざまな制度についてもわかりやすく解説。
    さらに、マタハラを受けたときや目撃したときの相談先などの情報を盛り込み、実用的な内容になっています。

    詳しくは、株式会社ヒューマンサイエンスのeラーニングサイトをご参照ください。
    eラーニング教材「STOP!マタハラ ~働きやすい職場づくりのために~」