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2021.03.09

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eラーニング教材の作り方④ ~パワーポイント編~

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    前回に引き続き、

    ・eラーニングによる教育にチャレンジしてみたいが、何から始めればいいかわからない
    ・教材はできるだけ内製したい

    と考えている教育ご担当者様に向けて、教材作成についてご説明いたします。

    第1回では、「eラーニングの3つの形式」についてご説明しました。
    1.アニメーション(html5形式)
    2.映像・ビデオ形式
    3.パワーポイント

    今回は、パワーポイントで作成する教材について、概要、および作成方法をご説明いたします。



    1. eラーニング教材をパワーポイントで作成するメリット・デメリット

    eラーニング教材を作成する際、パワーポイントは、最も手軽な手段です。
    原稿の作成開始から配信までが比較的短期間で、その分コストも軽減されます。
    そのため、更新頻度の高い教材や、素早く周知したい事項の共有に向いています。
    たとえば、法律、法令など定期的な改正があるもの、社内制度・ルールの改訂周知などです。
    なお、集合研修向けの資料などが既にある場合は、それら既存の資産を活用すればより効率よく教材を作成できます。

    パワーポイントでは、アニメーションやナレーションを付けることができます。箇条書きを順番に表示させる、ナレーションに合わせて強調する、といった動きを記録しておき、動画形式で書き出します。

    また、スライド内に動画を読み込めば、教材内で動画を再生させることもできます。

    注意点

    ナレーションが長くなったり、ページ数が増えたりすると、パワーポイントだけで作成するには作業が煩雑になる場合があります。
    また、動画形式では実現できない動きが必要になることもあります。(例:学習者の操作によって進行させるインタラクティブ性の実装など)
    そのような場合には、パワーポイントとiSpringなどのeラーニング作成ツールを組み合わせます。
    パワーポイントとツールを組みわせると、ナレーションと画面上の動きの細かい同期、学習者に操作させる(インタラクティブ性)、クイズの作成などが可能です。
    書き出し形式は、html5形式など複数から選択できます。

    各ファイル形式について

    ファイル形式 概要 ツール
    動画(*.mp4または*.wmv) パワーポイントから動画形式での書き出しを行い配信。アニメーション効果、およびナレーション可。 Microsoft パワーポイント
    html5 パワーポイントとツールを組み合わせる方法。html5形式で書き出して配信。
    比較的複雑な効果付けや細かいナレーション同期、インタラクティブ性の実装が可能。
    ツールによっては、クイズの作成、ストーリーの分岐なども可能。
    Microsoft パワーポイント、
    iSpring、
    Adobe Presenterなど

    LMSの種類や、配信方法によっては、パワーポイント形式(*.pptx、*.ppt)のファイルをそのまま配信できる場合もあります。ただし、以下の点に注意が必要です。

    1. ・アニメーションなどを設定していても、学習者がスライドショー形式で閲覧するとは限らない
    2. ・学習者の環境によってはファイルを閲覧できない場合がある(パワーポイントがインストールされていないなど)
    3. ・学習者が自由に変更・改変できてしまう

    2. パワーポイントと組み合わせて使用するツール「iSpring」

    パワーポイントと組み合わせてeラーニング教材を作成できる、代表的なツールに、「iSpring」があります。
    iSpringは、パワーポイントのアドインソフトとして使用します。

    iSpringを使えば、ナレーションやアニメーションについて、タイムラインを使って細かな調整・修正ができるようになります。
    パワーポイントだけを使っている場合、スライドショーを実行し、それを記録していく方法になります。そのため、修正が発生した場合は、スライド単位ではありますが、スライドショーの記録を最初からやり直す必要があります。
    ツールでは、ナレーションファイルの差し替えはファイルを指定するのみ、アニメーションのタイミングはドラッグ操作などで調整できます。

    また、クイズ生成ツールや、スクリーンキャプチャ(画面上での操作を記録するツール)を備えていたり、教材の形式や体裁も選択できたりします。


    iSpringは、パワーポイントのタブから操作する

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    3. パワーポイントを使ったeラーニング教材の作り方

    パワーポイントから動画形式の教材を作成する方法をご説明します。

    Step1.企画・設計

    機能や構成設計、配信方法など、教材の仕様を確定させる工程です。
    この工程をしっかりと矛盾なく行うことで、各工程がスムーズに、効率よく進みます。
    ファイル形式やスライドサイズなどもこの段階で決めておきます。

    Step2.原稿作成

    パワーポイントの「スライド」は、画面上に表示される部分です。学習者は画面を見て学習することを考え、文字サイズやレイアウトを決めていきます。
    ナレーションを付ける場合は、「ノート」部分に記載していくと便利です。
    ナレーションを付けない場合は、スライド上の説明や画像、動きだけで伝わるように組み立てていきます。

    スライドに配置する要素やナレーションが決まったら、それをどう動かすかを決めていきます。

    ナレーションを付けない場合でも、順番に表示させるなどの動きや、そのタイミングを考案します。ナレーションなしで進行するので、説明すべき順序で表示させたり、文字を読む時間を考慮したタイミングになるようにしてください。
    一切アニメーションをさせず、静止画で進行させることもできます。

    ナレーションを付ける場合は、ナレーションを軸に、動きのタイミングを決めていくと便利です。
    スライド内での動きは付けずに、ナレーションが終わったら次のスライドに遷移する(静止画+ナレーション)、という演出にすることもできます。

    演出案は、「ノート」にメモを残しておくと便利です。
    なお、イラスト、写真、映像といったビジュアル部分の素材が揃っていれば、この工程でアニメーション効果をつけても構いません。
    アニメーション効果については後述します。

    Step3.ビジュアル部分の素材準備(イラスト・写真・映像)

    スライドを作成する際、パワーポイントの図形描画機能を使って図を作成するほかに、イラストや写真、映像などの素材を、必要に応じて準備します。
    素材は、pixta、アフロなどの専門業者から購入したり、無料でイラスト素材を公開しているサイトなどからダウンロードしたりします。
    映像については、例えば、集合研修などで放映していた動画ファイルを、スライドに貼り付けておけば、教材内で再生させることができます。

    Step4.ナレーション収録

    ナレーション付きの教材の場合は、ナレーション収録を行います。
    プロナレータに依頼するか、集合研修の講師や教育担当部門の社員が担当するか、などを検討し、実施します。

    ちなみに、パワーポイントには、「スライドショーの記録」を行う際、同時にナレーションを録音する機能があります。パソコンにマイクを接続すれば使えます。この機能を使う場合は、「Step5.スライドショーの記録」のタイミングでナレーションを収録してください。数ページだけの簡易な教材や、納期優先・かつ完成後のメンテナンスも必要としない場合などに向いています。
    ただし、NGテイクが発生する可能性があることや、ナレーションを音声素材として持っている方が応用が利くことから、事前にナレーション収録をすることをお勧めします。
    音声素材として持っておけば、教材の改定時などに、変更のない部分はそのまま流用したり、一部だけを編集で差し替えたりできるので、修正時の負荷が軽減されます。また、パワーポイント以外のツールを使って教材を作成することになっても、素材ファイルとして活用できます。

    ナレーションは、合成音声を使う方法もあります。
    合成音声の場合は、正しく読み上げるかどうかの確認をしながら音声ファイルを作成しておきます。

    Step5.スライドショーの記録

    原稿、素材が揃ったら、パワーポイントファイルを仕上げます。
    ナレーションデータは、各スライドに挿入しておきます。

    また、演出指示に基づいて、アニメーション効果をつけていきましょう。
    アニメーションを設定する際のポイントを挙げます。

    1. ・使う種類を絞る
    2. ・原則シンプルな動きを選ぶ
    3. ・「効果のオプション」を活用する

    パワーポイントのアニメーションは、「開始」「強調」「終了」に分類されています。それぞれに、さまざまな動きが用意されていますが、「開始」「強調」「終了」で使う効果をそれぞれ1~2種類に限定することをお勧めします。さらには、原則シンプルな効果を選ぶと良いでしょう。

    使う種類を限定すると統一感が出るので、洗練された印象を与えることができます。また、必要以上に派手な動きにしてしまうと、学習内容よりも、動きの方に注意が向いてしまうので避けましょう。
    ただし、最重要事項や、「ここぞ」というときには、他では使っていない効果を敢えて使い、印象付けることもできます。特に、プロモーション要素が含まれているような教材では、敢えて派手な動きを使った方が良い場合もあります。

    また、アニメーションは、初期設定のままではなく、適宜「効果のオプション」を活用します。初期設定のままでは説明順と逆の順番で表示されたり、動くスピードが早すぎる/遅すぎる といったことがあります。
    「アニメーション ウインドウ」から「効果のオプション」を選択してダイアログボックスを開けば、細かな設定が可能です。

     

    アニメーションの種類によって表示されるタブや項目は異なります。

    スライドが完成したら、「スライドショーの記録」を使い、「Step2.原稿作成」で考案しておいた演出指示どおりにスライドショーを記録します。
    スライドショーを記録する際には、「ノート」にメモしておいた演出指示やタイミングを活用しましょう。

    全ての記録が終了したら、「エクスポート」から「ビデオの作成」を選択し、動画書き出しを行います。
    「記録されたタイミングとナレーションを使用する」を選択すると、「スライドショーの記録」で記録したとおりに動画が作成されます。

    Step6.配信

    作成したファイルは、各LMSに合わせてscorm化などを行い、搭載します。

    【参考】iSpringを利用する場合

    パワーポイントとiSpringを組み合わせる場合も、原稿作成、素材作成などの工程はほぼ同じです。
    iSpringでは、「ノート」に記載されたテキストを字幕として活用できます。「Step2.原稿作成」において、演出指示のメモなどを載せている場合がありますので、必要に応じて編集します。

    アニメーション効果は、パワーポイントの機能を使ってつけておきます。

    ナレーションの読み込みと、アニメーションのタイミングの調整は、iSpringの機能を使います。
    また、必要に応じて、インタラクティブ性の実装やテストの作成なども行います。

    最後に、書き出し形式やLMSとの通信などを設定した後、書き出し(パブリッシュ)を行います。
    iSpringでは、動画形式のほか、html5形式なども選択できます。また、scorm化も設定に応じた内容で書き出せるため便利です。


    4. まとめ

    これまで、4回にわたりeラーニング教材の作り方についてご説明してまいりました。
    実際に作成される際は、以下のようなポイントで、作成するファイル形式や使用するツールをご選択ください。

    1. ・教材内容・テーマ
    2. ・お手持ちの素材、機材、ツール
    3. ・作成期間(締め切り)
    4. ・作成に割ける人員やスキル、監修者
    5. ・搭載するLMSの対応状況(どのようなファイル形式に対応しているか)
    6. ・ナレーション収録の機材や編集ソフト、iSpringなどの購入コスト(必要な場合のみ)
    7. ・社外リソース(イラスト等の素材、プロナレータ)を活用する場合のコスト(必要な場合のみ)

    上でも挙げていますが、工程の一部のみ、素材のみであっても、社外のリソースを適宜ご活用いただくと、より良い教材を効率よく作成できるかと思います。

    社外リソースをご利用になる場合には、以下の事項が具体的になっているほど、作成したい教材をより短時間で作成できます。

    1. ・教材の内容、カリキュラム、構成
    2. ・学習目標(履修後の学習者のあるべき姿、作成の方針・方向性)
    3. ・できあがりイメージ(どんな教材にしたいか)

    さらに、

    1. ・原稿
    がしっかりと形になっていれば、社外リソースの役割(作業範囲)がより明確になるため、コスト面でも有利に運ぶことができます。

    これまでご説明してきた事項をご確認いただきながら、是非チャレンジしていただければ幸いです。

    執筆者:

    佐瀬 志津子

    教育ソリューション部 制作グループ ライター
    ヒューマンサイエンス入社後、テクニカルライターとして、
    製品マニュアルや業務マニュアルの設計・ライティングを経験。
    その後、eラーニング教材の原稿の執筆と制作ディレクションに従事。
    これまで約200本に及ぶ教材の制作に携わる。

    お問合せ先:

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