2023.07.25
2023.11.14
オンライン学習における動画配信の種類は?~授業や研修における動画配信のメリット・デメリット~
最近、多くの企業がテレワークを採用しています。それに伴い、人材育成でも動画を使った研修が増えてきました。同様に、教育現場でも動画の活用が急速に進んでいます。また、多くの人々がパソコンやスマートフォンで動画を視聴することに慣れてきており、動画研修や授業への需要も高まっています。ここでは、動画研修の利点や導入方法についてわかりやすく解説します。
1.授業や研修で使われる動画配信の種類
オンライン研修には、一般的に2つの方法があります。それぞれの特徴や利点・欠点を見ていきましょう。
・オンデマンド型の研修
オンデマンド型の研修は、あらかじめ収録された動画を視聴する形式です。このタイプは一般的に「eラーニング」や「Webラーニング」とも呼ばれます。オンデマンド型の場合、講師との双方向のコミュニケーションは取ることができませんが、講師のスケジュールに左右されず、いつでも自分の都合で好きな時に研修を受けることができるというメリットがあります。これは、YouTubeの動画やテレビ番組のHDD録画のようなイメージです。研修のコンテンツは保存・公開され、受講者は自分の好きなタイミングで何度でも再生できます。また、研修担当者はコンテンツを一度用意し、公開するだけで研修が進行するため、汎用的な内容であれば年ごとに使い回すこともできます。しかし、リアルタイム研修と比較してデメリットとしては、一方向のコミュニケーションであるため、視聴者は質問や意見を伝えることが簡単にはできなくなることです。
・リアルタイム型の研修
リアルタイム型の研修では、リアルタイムの講義をZoomといったWeb会議システムを使って視聴します。このタイプでは、講師のスケジュールに合わせなければならないという制約があります。また、受講回によって画像品質にバラつきが生じたり、通信環境の問題で音声や映像に乱れが生じたりする可能性もあります。もし、研修内容を後から振り返りたい場合は、録画を撮って共有することができます。ですが、1回限りの研修や短期的なオンライン研修を考えている方に適していると言えるでしょう。
利点は、リアルタイム型では臨場感を感じることができ、講師にリアルタイムで質問することができるなど、より深い理解を得ることができる魅力もあります。さらに、使用するツールは使いやすく、導入が容易なものが多いため、オンライン研修を始めるのに適しています。例えば、ZoomやTeamsを使って実施することができます。
2.社内研修や学校の授業で動画を活用するメリット
研修で動画を活用することには以下のメリットがあります。
・好きなタイミングで学び直せる
研修を録画し、動画として保存することで、受講者は自分の都合の良い時間に研修を振り返り、復習することができます。理解できなかった部分を解消するために、動画を使って学び直すことができます。
・ノートを取ることに必死にならずに集中できる
ノートを取ることは重要ですが、研修中にノートに集中しすぎると内容が頭に入りづらくなることがあります。研修の様子を動画でアーカイブに残しておけば、いつでも動画を見直して学習できるため、ノートに必死になる必要がありません。これにより、受講者は研修に集中できます。
・休んだ日の研修を学び直せる
病気などで会社や学校を休んだ場合、その日の研修を受けることができません。テキストで自主学習することもできますが、完全にカバーするのは難しい場合もあります。しかし、研修動画をアーカイブに残しておけば、休んだ日の研修もいつでもどこでも学び直すことができます。
・テレワークの社員も、学校に通えない生徒も受講できる
テレワークしている社員や学校に通うことが難しい生徒もいます。しかし、研修動画を配信することで、場所を選ばずに研修を受けることができます。これにより、テレワークしている社員も、また学校に通えない生徒も研修や授業を受けることができるようになります。
・研修の実施コストが削減できる
企業の場合ですが、対面の集合研修では会場の手配や講師を招くことなどで多くのコストがかかりますが、動画研修ではこれらのコストを削減できます。一度動画を作成すれば内容が大幅に変更されない限り、再利用が可能です。
・自分の業務を中断する必要がない
これも企業の場合になります。複数の支店を持つ企業の場合、集合研修に参加するために業務を一時停止する必要があります。短い時間で終わる研修であればそれほど問題にはならないかもしれませんが、1日または数日にわたる研修では通常業務に支障を来す可能性が高くなります。一方、動画研修では各社員が自分の支店でいつでも研修を受けることができるため、業務への影響を最小限に抑えることができます。
関連コラム:【アニメーション教材】eラーニング教材の作り方②
3.動画を活用する上でのデメリット・課題
動画研修には多くのメリットがありましたが、同時にデメリットも存在します。ここでは、いくつかのデメリットについて説明します。
・作成に手間がかかること
従来の集合研修では、WordやPowerPointを使用して資料を作成することが一般的でした。しかし、動画研修では受講者が理解しやすい動画を作成するために、動画編集ソフトの使用が必要です。ソフトに慣れたスキルを持つ人材がいない場合は、作成に時間がかかる可能性があります。また、動画が完成しても情報の更新に伴う編集作業が必要な場合もありますので、導入する前に作成だけでなく運用方法も検討する必要があります。
・緊張感を保ちにくい
動画研修は、講師がいない状況で誰でも受講できます。そのため、心理的なハードルは低いですが、同時に緊張感を保つことも難しいです。緊張感がないと、集中力が途切れてしまったり、他のことを考えたり、別の作業をしながら受講してしまうことがあります。誰にも監視されないので、受講者の取り組み姿勢が低下する傾向があります。
・なかなか受講してもらえない
「いつでも都合よい時に受講できる」というメリットの裏を返すと、当然こうした問題がでてきます。いつでも受講できるので「後でやろう」となってしまいます。これを回避するためには、未受講者を特定して、背中を押してあげる必要があります。
・質問・回答のレスポンスに時間がかかる
動画を視聴している最中に疑問を感じても、その場で質問したり回答を受けたりできません。疑問点を解消したければ、後日あらためて講師や担当者に確認する必要があります。質問から回答のレスポンスの遅さは、積極的に学ぶ姿勢がある参加者にとっては不利な状況です。モチベーションの低下を招くリスクもありますので、チャットやメールなどで随時質問を受け付けられる仕組みを構築するなど、一定の工夫が必要でしょう。
・直接コミュニケーションを図れない
動画研修の最たるデメリットが「リアルなコミュニケーションを図れない」という点です。一般的な研修であれば、講義スタイルであってもグループワークの時間が設けられたり、自己紹介の時間があったりなど、なにかとコミュニケーションをとる機会があります。動画研修は基本的に「1人で視聴して学ぶ」というスタイルになので、他の参加者との交流はほぼありません。そのため、チームワーク向上を目的とした研修や、チームビルディングなどの研修は、動画研修に適していません。
・受講者のネット環境によっては動画を視聴できない
動画研修の出来は、受講者のネット環境によって左右される面があります。たとえば、「パソコンを持っていない」「安定した通信環境が整っていない」といった受講者がいる場合、快適な動画視聴が難しくなるでしょう。最悪の場合、動画が見られない事態もありえます。
・設備の整備
研修の撮影や動画配信には適切な環境が必要です。スマートフォンのカメラは利用できますが、音声のクオリティを向上させるためには外部マイクの使用が求められます。さらに、より良い画質や照明の調整が必要な場合には、カメラや照明の準備も考慮する必要があります。
・講師のIT関連知識の向上
研修の撮影、編集、共有などの作業は教員が担当する必要があります。外部業者に依頼することもできますが、その手段が利用できない場合もあります。講師自身がITに関する知識を向上させる必要があります。基本的なコンピュータ操作はもちろん、撮影や編集、共有の流れをスムーズに行えるレベルの知識が求められます。
・セキュリティとプライバシーの配慮
研修動画は受講者が利用するために作成されるものであり、一般公開されるべきではありません。したがって、セキュリティとプライバシーの保護に配慮する必要があります。YouTubeの限定公開などの方法もありますが、URLが漏洩すると容易にアクセスされてしまう可能性があるため、専用のシステムを検討するなど、適切な対策を講じる必要があります。
これらが、会社の研修や学校の授業で動画を活用するときに懸念点や課題になります。ぜひ、導入の際に参考にしてください。
4.動画配信が向いている研修/授業は?
動画研修のメリットとデメリットについてご紹介しましたが、効果的かどうかは目的によっても異なります。ここでは、動画研修がおすすめなケースについてご紹介します。
・業務マニュアルとしての活用
業務の手順やクレーム対応などのマニュアルは、動画研修に適しています。なぜなら、業務マニュアルは内容があまり変わらないことが多く、動画研修では何度も繰り返し視聴することで内容をしっかりと覚えることができるからです。
・機器や機材の取り扱いマニュアルとしての活用
動画研修では、現場で使う機器や道具の使い方をわかりやすく説明できます。実際の現場で操作する様子を撮影しながら、研修用の動画を作ります。その中で、大切なポイントや注意すべきことを、操作する人が話したり、編集時にテキストや絵で示したりして、分かりやすく伝えることができます。
・製品やサービスの研修
自社の商品やサービスに関する研修にも動画を使うことができます。動画では、実際の使い方やお客様に魅力を伝えるポイント、商品やサービスの紹介方法などを共有することができます。新しい社員の研修だけでなく、新しい商品やサービスが出る時に全社で共有する際にも使えます。
・集合研修の事前学習に活用する
事前に動画研修で知識を学び、集合研修では実践的な内容を行う方法はおすすめです。座学と実技を同じ研修で行うと時間がかかる場合は、動画研修を活用することで集合研修の時間を短縮できます。また、集合研修では緊張感が薄れることがあるので、アウトプットの場を設けることで受講者の集中力を高めることができます。
・集合研修の補講や復習に活用する
集合研修の様子を撮影した動画をみんなで共有することができます。参加できなかった社員の補習や、参加者が復習するため、新しく入ったメンバーが受けるためにも使えます。ただし、外部の講師を呼んで開催する場合は、撮影の許可を得る必要がありますし、撮影の目的にも同意を得る必要があるので注意しましょう。
・ビジネスマナーに関する研修
一般的なビジネススキル(PCスキル、ビジネスマナーなど)の中でも、特に動作を伴うビジネスマナーのようなテーマと動画研修は相性が良いです。例えば、お辞儀の仕方も状況により角度が変わりますが、実際の動作を映像で見せることで一目瞭然です。映像であれば、各動作のタイミングや細かな所作なども伝えることが可能です。他にも、表情・態度・名刺交換など、ビジネスマナーには動作を伴うものが多く、動画研修が役に立ちます。
5.LMSを利用した動画配信の視聴管理
上では動画配信がおすすめの研修/授業をご紹介いたしましたが、動画を配信するためにはシステムが必要です。オンラインシステムであるLMS (Learning Management System)を使うと動画研修に必要な学習教材を提供したり、受講者がいつ、どれくらい動画を視聴したかを管理したりすることができます。ここでは、LMSのオープンソースソフトウェアとして有名なMoodleと連携できる動画配信アプリについていくつかご紹介します。
BigBlueButton: BigBlueButtonはオープンソースのWeb会議システムで、Moodleとの統合が可能です。ビデオ会議、チャット、画面共有、発表資料の共有など、様々な機能を提供します。
https://moodle.org/plugins/mod_bigbluebuttonbn
Panopto: Panoptoは企業や教育機関で広く使われている動画配信プラットフォームです。PanoptoのMoodleプラグインを使用することで、Moodle内で動画のアップロード、共有、視聴が可能になります。
https://moodle.org/plugins/block_panopto
Kaltura: Kalturaはクラウドベースのビデオプラットフォームで、動画の作成、編集、配信を簡単に行うことができます。KalturaのMoodleプラグインを使用することで、Moodle内で動画を管理および共有できます。
https://moodle.org/plugins/local_yukaltura
https://moodle.org/plugins/local_yumymedia
Vimeo: Vimeoは一般的なビデオ共有プラットフォームですが、ビジネスプランを利用すると高品質の動画配信が可能になります。VimeoのMoodleプラグインを使用することで、Moodle内でVimeoの動画を埋め込むことができます。
https://moodle.org/plugins/mod_videotime
millvi(ミルビィ): 株式会社エビリーが提供する、クラウド型(SaaS型)動画配信システムです。視聴制限を設けた動画配信に必要な機能がすべて揃っています。Moodleと連携し、Moodle内でmillviの動画を埋め込むことができます。
https://eviry.com/service/
これらは利用できる動画配信アプリの一例です。Moodleには他にも多くのプラグインや統合オプションがありますので、Moodleの公式ウェブサイトやMoodleコミュニティでさらに詳細な情報を入手することをおすすめします。
リアルタイム型の研修はWeb会議システムが使われます。Moodleで利用できるWeb会議システムについてもいくつかご紹介します。
Zoom: Zoomは広く使われているビデオ会議プラットフォームで、Moodleとの統合も可能です。ZoomのMoodleプラグインを使用することで、Moodle内でZoomの会議をスケジュールし、参加者にアクセスを提供することができます。ある学校で、これまでは単純にZoomを使った授業を行ってきましたが、それだけでは出席者の履歴がとりにくいためにMoodleと連携して管理するようになったという実例があります。
Microsoft Teams: Microsoft TeamsはMicrosoftが提供するコラボレーションツールで、ビデオ会議機能も備えています。TeamsのMoodleプラグインを使用することで、Moodle内でTeamsの会議をスケジュールしたり、参加者にアクセス権を与えたりできます。 https://moodle.org/plugins/atto_teamsmeeting
Jitsi Meet: Jitsi Meetはオープンソースのウェブ会議システムで、Moodleとの統合も可能です。簡単にビデオ会議を開始し、画面共有やチャットなどの機能を利用することができます。
https://moodle.org/plugins/mod_jitsi
こちらもMoodleの公式ウェブサイトやMoodleコミュニティでさらに詳細な情報やプラグインを見つけることができます。組織や教育機関によっては制約のある場合があるので、それに応じた最適なWeb会議システムを選択することが大切です。
6. まとめ
このブログでは、授業や研修で使われる動画配信の種類やそれを活用するメリット・課題について取り上げてきました。オンラインの研修とは言っても、オンデマンド型やリアルタイム型などがありそれぞれのメリットがあります。そうしたメリットを活かせる研修や授業にぜひ積極的に取り入れていきたいものです。また、Moodleを始めとしたLMSと一緒に活用するなら受講者の視聴を管理することができてとても便利です。LMSをサービスとして提供してるベンダーに相談するのも良い方法と言えるでしょう。その際は、Moodle公式パートナーの株式会社ヒューマンサイエンスにご連絡ください。
>Moodle導入支援・運用>Moodle構築・導入運用支援 サービス
>Moodle導入運用支援 実績
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