2023.09.01
eラーニング導入に使える助成金ってあるの?
働き方改革やコロナ禍などを経て、在宅勤務、テレワークが定着しつつあります。それに伴い、社内研修もオンライン化を検討されている企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。
研修のオンライン化には、特定の日時に講師がライブ配信を行う形式や、eラーニングなど受講者が自分の都合に合わせてアクセスし学習をする形式などがあります。
前者であれば、オンライン会議用のデバイスやアプリケーションなどを使える環境があれば、すぐにでも実施できますが、後者の場合は使用するシステムやデバイス、学習管理まで含めれば、実施に至るまでの要決定事項や準備作業は多岐にわたります。
さらに、実際に学習する教材の制作や手配も必要です。
このように、eラーニングを始めるには、計画段階からの検討や担当者などの体制づくり、また、システム導入や教材制作などのコストがかかります。
コストがネックとなり、eラーニングを導入するまでの進捗が思うようにいかないこともあるでしょう。
今回は、そのような場合に解決策のひとつとなり得る助成金にスポットを当ててみたいと思います。
1. eラーニング導入のための準備とコスト
eラーニングを導入するにあたり、必要な準備やコストにはどのようなものがあるでしょうか。
●教育を受ける環境づくり(システム導入、社内体制整備など)
●教材、講習など教育内容の整備
●受講者の人件費(受講に充てる時間分の賃金など)
※eラーニング導入にあたっての準備や要検討事項については以下をご参照ください。
>eラーニングとは?システムの概要とメリットを解説
>自社に最適なeラーニングプラットフォームとは?機能から種類、活用メリットまで解説!
システム導入には専門知識のある担当者を充てたり、業者に依頼したりする必要があります。また、サーバを自社内に構築する場合には、機材やアプリケーションの手配もしなければなりません。
教材や、講師(教材監修者含む)の手配も必要です。
さらに、従業員の受講中も賃金は発生します。
これからeラーニングを導入する企業にとっては、決して少なくない負担となります。そこで、助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
2.教育訓練への助成金制度
ここでは、国や自治体からの助成金3種類についてご紹介します。
1.人材開発助成金(厚生労働省)
2.IT導入補助金(中小企業庁)
3.オンラインスキルアップ助成金(東京都)
1.人材開発支援助成金
関連サイト:人材開発支援助成金制度(厚生労働省)人材開発支援助成金は、事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。(人材開発支援助成金制度サイトより引用)
訓練の内容、方法、目的、対象者によって異なる7つのコースが設定されています。
① 人材育成支援コース
② 教育訓練休暇等付与コース
③ 人への投資促進コース
④ 事業展開等リスキリング支援コース
⑤ 建設労働者認定訓練コース
⑥ 建設労働者技能実習コース
⑦ 障害者職業能力開発コース
このうち、①人材育成支援コース、③人への投資促進コース、④事業展開等リスキリング支援コースにおいて、eラーニングによる訓練が助成金の対象に含まれています。
「①人材育成支援コース」の概要
令和5年版パンフレット(人材育成支援コース)詳細版によると、人事育成支援コースの要件は3点です。
職務に関連した知識・技能を習得させるための、いずれかの訓練を、計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等が助成されます。
※令和5年版パンフレット(人材育成支援コース)詳細版より抜粋
eラーニングや通信制での教育訓練については、教材の標準学習時間や学習期間、教材の内容が要件を満たしていれば助成の対象となります。
※令和5年版パンフレット(人材育成支援コース)詳細版より抜粋
対象となる経費は、以下のとおりです。
※令和5年版パンフレット(人材育成支援コース)詳細版より抜粋
なお、eラーニングの場合、以下の実施方法については対象外です。なお、定額制サービスに関しては、他のコースで助成の対象となる場合があります。
●eラーニングによる訓練等及び同時双方向型の通信訓練のうち、定額制サービスによるもの
●広く国民の職業必要な知識及び技能の習得を図ることを目的としたものではなく、特定の事業主に対して提供することを目的としたもの(eラーニングによる訓練等及び通信制による訓練等に限る。)
また、パソコンソフトウェアや学習ビデオといった繰り返し活用できる教材や、職業訓練以外で汎用的に利用できるパソコンや周辺機器の経費も対象外とされています。
助成額や助成率はこのように定められています。
※令和5年版パンフレット(人材育成支援コース)詳細版より抜粋
助成額の上限はこちらです。
※令和5年版パンフレット(人材育成支援コース)詳細版より抜粋
賃金助成限度額は、1人1訓練あたり1,200時間、専門実践教育訓練では1,600時間です。
また、受講回数の制限もあり、1労働者につき1年度で3回までです。
1事業所が1年度に受給できる助成金は合計で1,000万円です。
そのほか、助成を受けられる事業主や、労働者についても要件が定められているため、詳細は厚生労働省のサイトやパンフレットでご確認ください。
「③人への投資促進コース」の概要
令和5年版パンフレット(人への投資促進コース)詳細版によると、こちらのコースでは、「人への投資」を加速化するため、令和4年~8年度の期間限定助成として、5つの訓練が設定されています。
※令和5年版パンフレット(人への投資促進コース)詳細版より抜粋
いずれの訓練でも、eラーニングは助成の対象となっています。
助成率は以下のとおりです。
※令和5年版パンフレット(人への投資促進コース)詳細版より抜粋
助成金の限度額は、1事業所につき1年度あたり2,500万円(成長分野等人財訓練を除く、また、自発的職業能力開発訓練は300万円)です。成長分野等人財訓練は、1,000万円が限度です。
また、1人あたりの金額や日数、時間数、受講回数なども定められています。
5つの訓練のうち、「定額制訓練」では、その名のとおり、定額受け放題研修サービス(サブスクリプション)が助成の対象となっています。
助成金申込の時点で、訓練の対象者として申請された人が、対象となる訓練を1時間以上受講し、全員の合計が10時間以上が要件となります。
ちなみに、定額制訓練に関しては、タブレットやルーターのレンタル代、LMSの入力代行サービスなどは、受講に必要な経費であっても、助成の対象外です。
定額制訓練以外の訓練についても、eラーニングで助成を受けられる条件などが定められています。詳細は厚生労働省のサイトやパンフレットでご確認ください。
「④事業展開等リスキリング支援コース」の概要
令和5年度版パンフレット(事業展開等リスキリング支援コース)詳細版によると、こちらのコースは、令和4年~8年度の期間限定の助成となっています。
このコースは、新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、事業主が雇用する労働者に対して新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
また、事業展開以外でも、企業内のDXやカーボンニュートラル化を進める場合に必要な専門知識および技能の習得をする際にも対象となります。
こちらのコースにおいても、eラーニングの定額制サービスが助成の対象です。「人への投資促進コース」と同様に、申請時に対象者として指定された者が、既定の時間以上の学習を完了させることが要件です。
助成額は以下のとおりです。
※令和5年度版パンフレット(事業展開等リスキリング支援コース)詳細版より抜粋
ただし、eラーニングの場合は、経費の助成のみです。
また、限度額、訓練時間、受講回数の上限なども決められています。
●申請の流れ
いずれの助成金も、訓練計画を作成し、事前に申請を行う必要があります。
申請後は、計画に沿って、助成の要件を満たすよう訓練を実施した後、訓練終了日から2か月以内に所定の申請書類を提出します。
審査を経て助成金の支給が決定され、助成金が支払われるという流れです。
2.IT導入補助金
IT導入補助金は、独立行政法人中小企業基盤整備機構より採択され、当機構および中小企業庁監督のもと一般社団法人サービスデザイン推進協議会が事務局業務を運用しています。
対象となる事業者は、中小企業、および小規模事業者です。
この補助金では、労働生産性の向上を目的とした、業務効率化やDX等に向けたITツール(ソフトウェア、アプリ、サービス等)の導入を支援します。
こちらの補助金にも、補助額、補助率、対象となる経費によって「枠」や「類型」があります。そのうちの「通常枠」で、eラーニングの導入(教育訓練プロセス)も対象となっています。
補助の対象は、「ITツール」にかかる経費で、ソフトウェア・オプション・役務が含まれています。 具体的には、ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、導入関連費です。したがって、導入コンサルティング、導入したシステムのマニュアル作成、導入後の保守サポートなどの費用も助成対象です。
補助金は経費の1/2以内、5万円~450万円以下です。
※IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型)より抜粋
なお、「A類型」と「B類型」は、補助金の対象となる「プロセス」の数による分類です。
この補助金は、IT導入のための補助金ですから、eラーニングに限らず、経理システムやグループウェア、在庫管理などのツール導入も対象となります。
規程で分類されているうちの、4つ以上のプロセスにわたってITを導入する場合はB類型とされます。
「プロセス」は以下のように定められています。
※令和元年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金 交付規程 通常枠 より抜粋
こちらの補助金を申請する場合は、IT導入後の労働生産性の伸び率などを含めた事業計画を立てて提出する必要があります。
交付申請の時点で、審査が実施され、交付されるかどうかが決まりますが、具体的な補助金額は、事業を完了させた後に確定します。
特に、B類型の場合は、給与支給総額の増加率の目標設定および達成など、A類型よりも要件が多く定められているので、よく検討して申請を行いましょう。
3.オンラインスキルアップ助成金
オンラインスキルアップ助成金は、東京都が支給する助成金で、公営財団法人東京しごと財団によって運営されています。対象となる事業者が、従業員に対して行う、eラーニングを利用した職業訓練にかかる経費が助成されます。
対象は、東京都内に本社または事業所がある中小企業や団体です。また、助成金を申請しようとする訓練が、既に国や地方公共団体から助成を受けていないことも要件です。
なお、職業訓練の中でも、DXを推進する場合の事業については、「DXリスキリング助成金」が別途設けられており、助成額も異なるため、該当する事業を推進するような場合は、そちらも含めて検討するとよさそうです。
さて、オンラインスキルアップ助成金では、eラーニング教材で、単講座あたりの価格が決められている場合でも、定額での受講も対象です。また、受講する際に必要なID登録料や、受講状況の管理など運用上の経費も対象です。
ただし、オーダーメイドで開発した教材や、職業・職務に無関係な内容、語学習得や試験問題のみで構成された教材などは対象外となるため注意が必要です。
助成額は以下のとおりです。
※令和5年度オンラインスキルアップ助成金サイトより抜粋
こちらの助成金を受ける場合は、交付申請書を提出し、審査が通れば訓練を実施し、実施後に支給額が確定されるという流れになっています。
3.まとめ
eラーニング導入時に利用できる助成金についてご紹介しました。
それぞれの助成金の目的と、自社の教育訓練の方針が合致すれば、公的な支援を受けながら従業員のスキルアップが望めます。
助成金によっては、相談窓口が設けられていることもあるため、活用されることをお勧めします。
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