2024.11.26
eラーニングを大学が導入するメリットとデメリットとは?
eラーニングは、近年ますます注目されている学習方法です。大学がeラーニングを導入することで、教育の効率性や柔軟性を向上させることができます。このブログでは、大学がeラーニングを導入する際のメリットとデメリットや、導入のポイントをご紹介します。
1. eラーニングとは?大学での使われ方
大学関係者向けのeラーニングの概要と、主に教育機関において普及している事実と背景を紹介します。
●eラーニングとは?
eラーニングは、インターネットを利用して行う学習方法のことです。パソコンやスマートフォンを使って、自分の都合に合わせて学習できます。インターネットが使える環境ならいつでもどこでも、そして自分のペースで進められます。
eラーニングにLMS(学習管理システム)※1を組み合わせると、受講者の進捗状況を把握したり成績や出席を管理したり、いろいろな管理ができるようになります。今ではeラーニングは、企業研修や教育分野で広く活用されています。
>eラーニングとは?システムの概要とメリットを解説
※1 LMSとは
LMSは「Learning Management System」の略で、eラーニングを管理・運用するためのプラットフォームで「学習管理システム」と呼ばれます。LMSは、オンラインで提供される教材の管理、受講者の学習進捗の記録、成績の記録などを行うシステムです。
- 教材の管理:オンライン教材の追加、削除、更新が可能。
- 受講者情報の管理:受講者の登録、学習進捗の記録。
- 学習進捗の管理:受講者がどこまで学習を進めているかを把握。
●大学・専門学校での使われ方
大学や専門学校では、自分が選択した教科や科目によってカリキュラムが決まっています。そのカリキュラムを実行するための支援としてeラーニングは使われています。教科の内容によって違いはありますが、主に次のような使われ方があります。
・授業に関する情報(例えば休講など)を学生に知らせします。
・授業前に読んでほしい教材を掲載し、事前学習を促します。
・レポートをオンラインで提出することができ、採点もオンラインで実施します。
・〇×・多肢選択・穴埋め・記述式などの小テストを実施して、理解度を確認します。
・授業後にアンケートを行い、感想や希望を聞きます。
・Web会議システムを使ってリアルタイム授業を行います。その授業を録画し、出席できなかった学生のためにオンデマンド配信します。
・グループチャットで課題に取り組み、結果をレポートします。
・フォーラム機能を使って教師同士のナレッジを共有します。
いかがでしょうか。さまざまな使われ方がありますが、すべてオンラインで実施することができます。もしLMS上でeラーニングを利用するならすべての操作履歴をデータとして残すことができるので、その内容を分析して今後の授業に役立てることもできます。
2. eラーニングを大学・専門学校が導入するメリットとデメリット
eラーニングの使われ方をご紹介しましたが、それを大学・専門学校が導入する際のメリットとデメリットを紹介します。
【メリット】
●学生のさまざまな状況に対応できる
病気やケガなどで学校に来られない学生がいる場合、いつでもどこでも学べるeラーニングは便利です。自宅からオンラインで授業に参加することができます。通信制の学校でも使われています。
●映像や音声により学生の理解度の向上や興味関心の持続を期待できる
動画や音声は、視覚と聴覚の両方を使って情報を伝えるので、理解しやすく、記憶に残りやすくなります。動画では、実際の動作や手順を視覚的に示すことができます。特に技術的なスキルや手順を学ぶ際に動画の教材は非常に有効となります。動画教材には、クイズやインタラクティブな要素を含めることもできるので、学習者の理解度を確認しながら進めることができます。
●自律学習の力を養う
eラーニングの利点は、時間や場所に縛られずに学習できることです。教室での授業では受け身になりがちですが、eラーニングでは自分のペースで学習を進めやすくなります。自分で(教師の助けも借りますが)学習計画を立て、その計画に従って学習を進めることによって、自律学習の力を養っていくことが期待できます。
●学習履歴を取得して活用できる
・学生にとって
自分の学習の進捗を確認できるなら、モチベーションの維持に役立てることができます。達成した内容と未達成の内容を把握することもできるので、次の学習目標の設定に役立てることができます。また、学習履歴を見返すことで、苦手な分野やトピックを特定して、重点的に復習することもできます。
・教師にとって
学習履歴を分析することで、学習者に最適な教材やリソースを提供できます。また、学習履歴を基に具体的なフィードバックを提供しやすくなります。
●教師同士のナレッジ共有がスムーズ
eラーニング教材のように動画や図解を用いたインタラクティブなコンテンツを作成すれば、視覚的に理解しやすい形でナレッジを共有することができます。例えば、ある授業で使った動画や図表を他の授業でも使うことがしやすくなります。また、スマートフォンやタブレットでもアクセスできれば、いつでもどこでもナレッジにアクセスし活用することができます。フォーラムやチャット機能を活用して、教師同士が自由に意見交換できるコミュニティを作るなら、ナレッジ共有を一層促進させることができます。
【デメリット】
●体験学習や実技教育には向かない
eラーニングは、パソコンやスマホを使って主に座学を学ぶための方法として一般的で、実技の技術を学ぶという点では難しいと言われています。例えば、ある料理の方法をeラーニングで動画を見て学ぶことはできますが、火加減や炒め具合(香りによる判断)、フライパンや鍋の扱い方(重さを感じる)など、実技で学べることはさらにたくさんあります。eラーニングを事前学習として使い、知識を取り入れた後、実習で学ぶなどの工夫が必要になります。
●自律学習を継続させるには工夫が必要
eラーニングは「いつでも・どこでも・自分のペースで受講できる」のがメリットですが、その反面、一人ひとりの学習意欲によって進み方や理解度が左右されます。一人で受講することの多いeラーニングにとって、モチベーション維持は最大の課題といえます。それで、学習者のやる気を持続させるための工夫が必要になってきます。
●eラーニング用の教材を用意するには少し手間と時間がかかる
効果的なeラーニングを提供するためには適切な「教材」が欠かせません。一般的な内容であれば市販されているものを購入して利用することができます。もし自分自身でeラーニング教材を作成したい場合には少し手間と時間がかかることになります。例えば、PowerPointで資料を作成し、その中に撮影した動画を組み込みたい、その資料の最後には理解度テストも含めたいとします。また、ナレーションも入れたいということもあります。そうなると、作成するためには専用ツールを使うことになるので、そのツールの使い方を覚えなければなりません。それで、効果的なオリジナル教材を作るのは少し大変な作業となるかもしれません。
3. eラーニング導入のためのポイント
eラーニングも万能ではありません。上記で説明したように得手不得手があります。それで、その点を踏まえて大学・専門学校が導入する際に注意を払うことができるポイントについて紹介します。
●体験学習や実技教育には向かない課題への対策
ただ知識を学ぶだけでなく、「疑似的に体験できる」新しいeラーニングが注目されています。例えば、AIを使った英会話トレーニングがあります。オンラインでAIと会話することで、ネイティブの先生と話すのと同じような練習ができます。これまでのeラーニングでは難しかった「書く」力や「話す」力も身につけられるようになってきました。
また、安全教育でこういうことは事故につながる、というような実際には再現できないようなことを動画やアニメーションを使って学習することができます。実際のリアルな操作や場面を反復して学習できることはeラーニングならではの学習方法です。
●自律学習を継続させる対策
目標設定と進捗管理は自分自身で行う必要がありますが、eラーニングでは学ぶことが楽しくなる工夫をいろいろ取り入れることができます。
例えば、見るだけの一方向の動画ではなく、学習者側からの操作ができるクイズやアクティビティが組み込まれたインタラクティブな動画を用意するなら学習者のモチベーションをアップさせることができるでしょう。また、ゲーム要素を取り入れて、ポイントやバッジ、リーダーボードなどを活用することも有効です。
授業では、疑問点があったら手を挙げて先生に質問することができます。eラーニングならAIチャットボットを使って質問することができます。それは学習の進行をサポートしてくれ、楽しい経験になるでしょう。
eラーニング用教材の準備の負担を減らす対策
・PDF文書やWordやExcelファイルを配信できるLMS※1を選ぶ
eラーニングプラットフォームは、受講者に向けてeラーニングの教材を配信できる機能を備えています。
以下のようなファイルを教材として配信できるLMSを選ぶなら、教材の準備の負担を減らすことができます。
- PDF文書
- Word
- Excel
- 動画ファイル
・手軽に教材を制作できるツールで制作する
こんな声を聞くことはないでしょうか。
- パワーポイントとワードで案は作成したけれど、どうやって教材にしてよいのかわからない
- 動画にせず、安く早く仕上げたい
- パワーポイントで原稿を作成したが、文字ばかりで見にくいし、わかりにくい
といった方におすすめです。
学習者の興味を引く、魅力的な教材を手軽に作成できるツールを2つご紹介します。
iSpring Suite
iSpring Suite(iSpring社提供)を使うなら、社内教育用に作成されたPowerPointファイルを、ナレーション音声とともにアニメーションが動く、リッチな教材を作成することができます。生成できるファイル形式は、HTML5、またはmp4です。更に、特別な知識や技術がなくても、メニューを選択していくだけでSCORMの各バージョンに準拠した教材を作成できます。
スライドやアニメーションは、使い慣れたPowerPointの機能を使って作成していきます。iSpring Suiteには、スライドテンプレートや什器・備品類のイラスト、アイコンなど豊富な素材が用意されています。また、老若男女のポーズ、表情、アングルなどバリエーション豊かな写真素材や、カスタマイズできるキャラクターイラストもあります。教材のナビゲーションやシミュレーションなどに活用できます。
テキストデータからナレーション音声を作成することができます。52種類の言語に対応しています。各言語には、声質や性別の異なるキャラクターが用意されているので、好みの声を選んで利用することができます。
社内教育用のPowerPointファイルを、ナレーション音声とともにアニメーションが動く、リッチな教材を作成することができます。
>iSpring Suiteとは?特徴・価格・導入メリットを紹介
Vyond
学習者の83%は文字で学習するよりも動画を見ることを好むようです。Vyond(Vyond社提供)という動画作成ツールを使うなら、業務に関連のある魅力的なアニメーションで、業務で忙しい学習者の注意を引きつけることができます。
こちらのツールもPowerPointのようなカンタンな操作性で、特別な技術や経験がなくても、短時間、低コストでアニメーション動画を作成することができます。アニメーション作成に必要な素材として、1,900以上の背景、1,300以上のキャラクター、14,000以上の小物イラスト、2,400以上のアクション(キャラクターの表情や動き)があらかじめ用意されているので、組み合わせるだけでOKです。また、オリジナルの画像やロゴ等をインポートして、自由にカスタマイズすることもできます。
>Vyondとは?ビジネスにも活用できるアニメーション動画制作ツールのメリットをご紹介
こうしたiSpring SuiteやVyondといった手軽に教材を制作できるツールを使うことで、PowerPointやWordとは違った、より魅力的な教材を制作することができます。
4. 大学でのeラーニング導入を成功させるLMS「Moodle」とは?
デメリットを埋めながらも、大学でのeラーニングの導入を成功させるLMSとしてMoodleを紹介します。こちらはMoodle4.1のサンプル画面(管理者でログイン)です。
●Moodleが大学におすすめの理由
Moodleは、国内の大学での一番普及しているLMSです。以下のように充実した機能があります。
受講者
・研修/授業資料の閲覧
・研修/授業資料のダウンロード
・研修/授業の出欠
・ワークショップ
・グループ/個別フォーラムでの交流
・質問
・アンケート
・本日のToDo
・レポート/課題提出
・テスト
・プライベートファイル
学習管理者
・出欠管理
・オンライン研修/授業
・研修/授業資料のアップロード
・成績管理
・レポート/課題管理
・レポート/課題採点、評価
・テストの実施
・テスト品質の分析
・進捗管理レポート
・修了証
・オープンバッジ
・SSO
・MFA(二段階認証)
・グループ/個別フォーラムでのアドバイス
・フィードバック
このようにMoodleにはたくさんの機能がありますが、そのうちの5つを取り上げて、少し詳しくご紹介します。
小テスト
Moodleの小テストは、自動採点されます。学習者が小テストを受験し答案を提出すると、Moodleによって自動採点された結果が学習者に提示されます。答案提出の直後に正誤や成績が表示され、正答に関するフィードバックを示すこともできます。教員は、学習者の答案や成績の履歴を見ることができます。
Moodleでは、多肢選択問題、記述問題、数値問題、穴埋め問題、計算問題、組み合わせ問題など、さまざま形式の小テストを出題することができます。さらに学習者が効率よく学習できる機能が豊富にあります。
フォーラム(ディスカッション)
Moodleの「フォーラム」は、一般にBBSや掲示板と呼ばれるものと同じ機能をもっています。学習者の書き込みに対して教員が評価点をつける機能もあります。また、書き込み内容がメールで参加者に転送される機能もあり、それがMoodleサイトへのログインを促して議論の活性化にも役立ちます。
課題提出
いわゆるレポート提出に相当するもので、文章の書き込みやファイルのアップロードにより、解答を提出する機能です。電子メールの添付ファイルで提出する方法に比べ、教員にとっては、提出期限がシステム上で設定でき、提出状況画面で未提出者が一目で分かるなど効率的に収集・管理できます。レポート提出者にとっても、自分のさまざまな提出物が散逸せずに一箇所に保存しておけるメリットがあります。
成績表管理
Moodleには「評定」と呼ばれる、成績表の管理機能があります。上で説明した様々な「活動」(小テスト、フォーラム、課題など)の各成績や、成績合計を見ることができます。
さらに、Moodleのメリットを5つご紹介します。
世界標準のプラットフォーム
Moodleが世界中で選ばれ続ける最大の理由は世界標準LMSであること、つまり世界中の大学、その他の組織によって磨き上げられ、標準化されたシステムであるという実績にあります。
実績としてはヨーロッパや日本の大学ではシェアNo.1、教育現場だけではなく世界中のグローバル企業、政府機関その他の組織にも広く導入されています。
また、数字の点から見てみてもサイト数15万以上、ユーザー数4億以上、239カ国・地域で利用されている、まさに世界最大規模の教育プラットフォームです。(2024年10月Moodle HQ統計参照)
ライセンス費用は無料
オープンソースソフトウェアとしてGPL※2の条件に従って無料で提供されています。使用するためのライセンス費用は不要です。
※2GPL(GNU General PublicLicense)とは日本語訳では一般公的使用許諾と言って、ソフトウェアの利用許諾条件などを定めたライセンスの一つです。内容としては主に二つあります。①自由に利用、再配布、改変や派生ソフトウェアの作成・配布が可能である。②派生ソフトウェア(改変したソフトウェアあるいは一体化して用いるソフトウェア)についてもGNU GPLライセンスに基づきソースコードの公開、利用、再配布、改変等が定められている。
柔軟にカスタマイズが可能
Moodleの基本機能を使用することに加え、自組織のニーズに合うようにカスタマイズができます。コース個々の目的・ニーズに合わせた柔軟なカスタマイズが可能なので、小規模なコースから大規模なコースまで、どのようなクラス規模にも対応できます。
必要な機能をプラグイン開発にて追加することが可能です。誰でも自由に入手、使用、改変、再配布することができます。
スマートフォンやタブレット対応
Moodleではレシポンシブデザインが採用されています。スマートフォンやタブレットに対応しているので、受講者はいつでもどこでも快適に講義を受けることができます。
Moodleはたくさんの機能とたくさんのメリットあるので、eラーニングのプラットフォームとして最適な環境を提供してくれます。
Moodleについてより詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
>【Moodle基本講座】Moodleとは?
>オープンソースのLMS「Moodle」のメリットは?
5. まとめ
今やeラーニングは、大学だけでなく企業や団体、さまざまなところで取り入れられ、たくさんの教育の場を提供しています。その利用の目的や状況に合ったLMSが使われていますが、上記のようにeラーニングの実施にMoodleがとても役立つことをご紹介させていただきました。最近では、eラーニングにもAIの技術がどんどん取り入れられています。MoodleもOpen AIを利用することができるようになりました。進化するeラーニングを支えるMoodleというプラットフォームの利用をお手伝いできるよう弊社ヒューマンサイエンスは日夜励んでおります。
eラーニングを導入したいと考えている方は是非ヒューマンサイエンスにご相談ください。
>Moodle導入支援・運用
>eラーニング教材制作
>eラーニング教材翻訳(多言語対応、ローカライズ)
Moodleの導入~運用の流れを解説しています。
Moodleの導入運用なら、公式パートナーのヒューマンサイエンスにお任せください。Moodleの導入支援実績も多数ご紹介しています。
プロジェクト:866件以上
企業・学校・団体:80事例以上
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