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2023.08.03

Moodle
事例紹介

MoodleとIBT~待合室機能を利用したオンライン試験の実施~

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    現在、学習のオンライン化が一層進められています。オンデマンド講義、リアルタイム講義、アンケートの実施やディスカッションなど、Moodleを使ってオンラインでこれらが実施されています。次の段階としては、試験のオンライン化です。IBT(Internet-Based Testing)方式といわれていますが、これはインターネットを経由して実施する試験のことです。そして、課題になるのは、本人確認と試験が滞りなく行われることです。 このブログでは、オンラインで学習を提供していて試験だけは教室で実施していたある学校が、IBT化に取り組んだ例をご紹介します。まずは、サーバーダウンのことからお話しします。


    1.鯖落ち?

    「鯖落ち」という言葉を知っていますか?「サーバーダウン」のことです。アクセス集中による過負荷や機器の故障等のために、サーバーの機能が停止してしまった状態のことです。チケット販売などで、「アクセスが集中しています」というページに飛ばされた経験があるでしょうか。つながったと思ったら、すでにチケットは完売しました、なんていうことになると、抑えようのない感情が沸き上がるかもしれません。

    日本で盛り上がったオリンピックのチケット販売はどうだったでしょうか。きっと「鯖落ちまでしなくても、つながらなくてたいへんだっただろう~」と考える人は多いでしょう。実は、東京2020オリンピック公式チケット販売サイトでは、こうしたアクセス集中ためにつながらないという問題を回避するために「待合室機能」が使われました。

    2.待合室機能とは?

    待合室機能とは、システムへのアクセスが多すぎる場合に、ユーザーを他のウェブサイトに誘導して待ってもらう機能です。これは人気ラーメン店で、長い行列を作って待っている人に例えることができます。店内の席が満席になると、お客さんは外の列に並んでもらいます。席が空くと、先に並んでいる人から順番に店内に案内されます。同じようにシステムへのアクセス数の上限を超えると(満席の状態)、仮想の待合室に誘導され、順番待ちをしているユーザーが先にシステムに案内される、ということになります。

    待機しているユーザーは、ただ待っているだけではありません。自分の順番や予想待ち時間を待ち合い画面で見ることができます。メールアドレスを登録すると、システムは順番が来たことをメールで知らせてくれます。ユーザーはそのメールにあるURLからシステムに入ることができます。主に、アクセスが集中するチケット販売や予約サイトで使われています。

    このブログでは、この待合室機能を提供しているQueue-it(本社:デンマーク、コペンハーゲン。2010年設立)のサービスを紹介します。

    3.Queue-itとは?

    Queue-itとは、Queue-it社が提供している待合室機能、つまりウェブサイトのトラフィック制御を行うツールです。(Queue-it社)もしトラフィックがウェブサイトの処理能力を超える場合、Queue-itはユーザーを仮想の待機列(キュー)に送ります。これによって、サーバーの負荷を分散し、ウェブサイトの安定性とパフォーマンスを向上させることができます。次のような機能を提供しています。

    ・公平な待機列を管理します。先着順や特定の優先度ルールに基づいてユーザーを処理し、不正行為やスキップを防ぐための厳格な制御を行います。
    ・待機中のユーザーにはカスタマイズ可能な待機画面が表示されます。この画面では、順番や予想待ち時間などの情報を提供し、ブランドのイメージに合わせてデザインを調整することもできます。
    ・ユーザーが待機列に入ると、通知オプション(メールやSMS)を通じて待機終了の通知を受け取ることができます。待機列が終了すると、ユーザーは自動的にリダイレクトされ、ウェブサイトに入ることができます。
    ・待機列の状態、待ち時間、ユーザー数などのデータをリアルタイムでモニタリングし、詳細なレポートを提供します。これによって、トラフィックの動向やパフォーマンスを把握し、将来の計画や最適化に役立てることができます。

    Queue-itは、大規模なオンラインイベントや販売サイトで利用されています。また、地方自治体のワクチン接種の予約サイトとしての活用例もあります。

    4.MoodleとQueue-itを利用したオンライン試験(IBT)

    ある大学でQueue-itを利用したオンライン試験を実施しました。どのように実施したのか、実例をご紹介します。

    この大学では、コロナ前からMoodleを使ったオンライン学習管理システムを全校に導入して授業を行ってきましたが、期末テストは生徒に登校してもらい、校舎でテストを行っていました。すでに大学側では時間をかけて検討を続けてきていましたが、昨年からオンラインでのテストを実施することになりました。その際、心配されたのが、多くの学生が一斉に試験を開始した際、システムにアクセスが集中して、つながりにくくなって時間通りに試験を開始できない学生が出てしまう、ということでした。それで、同時アクセス数を想定してMoodleのサーバーを用意しましたが、想定以上の利用がある場合を見越して、サーバーダウンを避けるためにこのQueue-itの待合室機能を利用しました。

    この待合室機能を開始するために、まず、現在のシステムのスペックを考慮してオンライン試験への学生のアクセス数の上限を設定しました。アクセス数が上限を超えると、学生は待合室(待機画面)に誘導されることになります。そして、アクセス数の上限に基づいて先着順でオンライン試験に案内されます。

    待機している学生には、待機画面で自分の順番や推定待ち時間を知らせるようにしました。この待機画面はカスタマイズできるので、大学のロゴを表示したり、メッセージの内容も大学側でわかりやすいものに変更したりしました。

    また、メールによる通知機能も利用できるようにしました。学生にメールアドレスを登録してもらいます。すると、待機しているときに入場可能となった際、入場用のURLが発行されメールで通知するようになります。これによって学生はPCの前でずっと待っている必要がなくなります。ですが、実際には、メールを受け取るほど待つことはありませんでした。

    待機している学生がオンライン試験に入場するまでの制限時間を時間単位で設定しました。これにより自分の順番が来ても一定時間入場しない学生は、待機室から出てもらい、次に待っている学生に入場してもうらことができるようになりました。

    オンラインで初めて実施した期末試験は混乱なく終えることができました。「アクセスできない」とか「鯖落ち」とかいう状況は回避されました。試験後、実際のアクセス数や待ち時間などのログが取得できるので、大学側では利用状況を確認し、次の期末試験に備えています。


    5.まとめ

    コロナ感染症の影響がしだいに小さくなっていますが、当初は急遽導入したオンライン学習管理システムが、次第にその活用が進み充実してきています。大学によっては、対面授業再開しましたが、オンライン授業も継続し、ハイブリッドで授業を行っています。待合室機能は、オンライン試験を実現させるための有効なソリューションの一つです。本人確認や不正防止をどのように行ったらよいのか、といった声も大学からお聞きします。そのためのサービスが多く出回るようになっています。将来、このブログでそのサービスについてもご紹介できればと思います。今後も、よりよいオンライン学習環境の提供に取り組んでいきます。

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